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相続放棄で注意!管轄間違えるとヤバい件

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相続放棄とはなにか

相続放棄とは相続財産が債務超過など、財産を一切相続したくない場合に家庭裁判所で行う法的な手続きです。相続放棄をすると単に財産が相続できなくなるということではなく、当初から相続人ではなかったことになるので、相続人としての一切の権利を失います。

相続放棄が受理されれば、その相続人は債権者から一切請求されません。

相続放棄の裁判所の管轄は?

相続放棄の申述をする際に間違いやすいのが裁判所の管轄です。

裁判所であればどこでもいいわけではありません。

それでは相続放棄の申述はどこの裁判所で行えばいいのでしょうか。

管轄は「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」

一般的な手続きの場合は、自分の住所地を管轄している裁判所に対して行いますが、相続放棄については原則として「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」が管轄となります。

間違えて別の管轄の裁判所で手続きしないよう注意しましょう。

管轄がわからない場合はどうする?

相続放棄をする際に被相続人の最後の住所地の判定が難しく、裁判所の管轄がはっきりわからない場合はどうしたらよいのでしょうか。

普通に考えれば、いろいろ調べてはっきりしてから管轄の裁判所に相続放棄の申述をすればよいのですが、相続放棄には期間の定めがあるため注意が必要です。

相続人は相続が開始してから3ヶ月以内に、管轄の裁判所に対して相続放棄をしないと単純承認といって相続をする方を選択したことになってしまいます。

そのため、相続放棄の管轄裁判所がはっきりわからない場合に関しては、とりあえずここだと思う管轄裁判所を推定して相続放棄の申述をして、万が一あとで管轄違いが判明した場合は、そこから正しい管轄裁判所に移送してもらうのがよいでしょう。

管轄の裁判所の調べ方は?

とは言え、提出後に管轄の間違いが無いかは、自分で調べておくべきでしょう。

時間に余裕のある方ならなおさらです。

初めから正しい管轄の裁判所に申述するに越したことはありません。

被相続人の最後の住所地がわからない場合、「戸籍附票」を取得すればよいでしょう。

戸籍附票とは、本籍地の市区町村で、戸籍の原本と共に保管している書類であり、住所の履歴が記載されています。

住民票は、現在の住所とその一つ前の住所しか記載されていないのに対し、戸籍附票は、その戸籍が作成されてから、現在まで(もしくは戸籍から除籍されるまで)の住所が記載されています。

ですから、被相続人の本籍地の市区町村役場から戸籍附票を取得すれば、最後の住所地も判明します。

万一、被相続人の本籍地も最後の住所地もわからないような場合でも大丈夫です。

その場合は、まず相続人本人の戸籍謄本を取得します。

自分の戸籍謄本には、一つ前の戸籍が記載されていますので、それを順番に辿っていけば、親族である被相続人の戸籍と必ずつながりがあるはずであり、被相続人の本籍地も判明するでしょう。

相続放棄は郵送でも可能

管轄の家庭裁判所が遠方である場合や、平日の昼間に時間が取れない場合、相続放棄の申述書は郵送で送ることもできます。

郵送方法に決まりはなく、普通郵便で送付することも出来ますが、宛先を間違えたり、誤配があったりなどで裁判所に届かない可能性もあります。

このように、普通郵便では、届いていないまま期限である3ヶ月が経過してしまうリスクがあるため、簡易書留やレターパックなど、追跡番号があり、到着を確認できる方法で郵送することをおすすめします。

 

相続放棄の期間

相続放棄は、前述したように相続が開始してから3ヶ月以内に行わなくてはなりません。

ですから、気が付いた時には期限まであと数日しかないということも多いです。

相続放棄の申述には、相続放棄申述書および戸籍謄本などの必要書類を一緒に管轄の家庭裁判所に提出する必要がありますが、必要書類がすぐに用意できないような場合、どうしたらよいのでしょうか?

必要書類がすぐに揃わない場合

必要書類がすぐに全て揃わない可能性があるなら、3ヶ月の期限まで時間がない場合については必要書類を待っていると相続放棄ができなくなってしまうため、とりあえず手元に揃っている書類だけで管轄の家庭裁判所に相続放棄の申述をして、あとから取得できた段階で速やかに残りの必要書類を提出しましょう。

相続放棄の3ヶ月という期間が過ぎてしまわないよう、差し迫っている場合はとりあえず申述しておくことをおすすめします。

 

期限が過ぎてしまったらどうする?

単純に3ヶ月の期限を忘れてしまっていたり、3ヶ月の間には被相続人に借金があるとは知らなかったりして、相続放棄の期限が過ぎてしまうケースもあるでしょう。

そのような場合どうなるのか、また、どうしたらいいのかを解説します。

3ヶ月の期限後の相続放棄はどうなる?

相続放棄は3ヶ月以内に管轄裁判所に申述するのが原則ですが、3ヶ月を過ぎてしまったからといって絶対に相続放棄ができなくなってしまうわけではありません。

後述するケースのような場合、3ヶ月の期限後でも相続放棄が認められることがあります。

ただし、うっかりしていて3ヶ月という期限を忘れていた、相続放棄は3ヶ月以内に行うものだと知らなかった、などの理由だけでは、期限後の相続放棄は難しいでしょう。

相続放棄は、「知らなかった理由に相当のものがある」とみなされない場合は、認められないことがほとんどだからです。

3ヶ月の期限後でも相続放棄が認められるケース

例えば、相続財産が一切ないと思って何も手続きをしてなかった相続人のところへ、相続開始から4ヶ月後に債権者から借金の請求が来ることが時々あります。

これは債権者側も3ヶ月という相続放棄の期間があることを知っているため、債務者が死亡してから3ヶ月の間はあえて請求をせずに息をひそめているのです。

そして相続人が相続放棄をできなくなる3ヶ月が経過してから、堂々と相続人に対して請求をしてくるわけですが、このような場合でも返済に応じなければならないのでしょうか。

3ヶ月が経過してから借金の存在が発覚した場合でも、弁護士に相談して管轄裁判所に掛け合ってもらえば相続放棄が認められる可能性があります。

裁判所の見解でも3ヶ月を経過した案件でも、相続放棄が認められる場合があるとの見解を出しているので諦める必要はありません。

ただ、必ず認められるというわけではなく、上記事例のように相続財産を調査してもわからなかったような借金が新たに発覚した場合など、一定の事情があるケースで可能になるようです。

過去の判例でも3ヶ月の起算点について、「相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時」と解釈しており、3ヶ月経過後でも相続放棄が認められる可能性があることがわかります。

いずれにしても3ヶ月経過後の相続放棄は事情が差し迫っている可能性が高いので、できる限り早めに弁護士に相談して管轄裁判所に掛け合ってもらいましょう。

3ヶ月の間に申述出来そうにない場合はどうする?

例えば、プラスの財産もマイナスの財産も非常に多く、財産の調査がなかなか終わらない場合や、相続人が海外で暮らしており、期間内に相続放棄をするかしないか決めるのが難しい場合などは、「熟慮期間伸長の申立て」をすれば、期間を伸ばしてもらうことも可能です。

熟慮期間とは、相続放棄が可能な期間のことであり、正確に説明すると、「自己のために相続の開始(被相続人の死亡)があったことを知った時から3ヶ月」です。

この期間内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に 熟慮期間伸長の申立てを行い、認められれば期間が延長されます。

3ヶ月後の相続放棄と異なり、財産調査のための時間が足りない、そのせいで決めかねている、というように、相当の理由がなくとも熟慮期間伸長の申立てはできるので、時間に余裕がない場合は早めに申立てすることをおすすめします。

相続放棄が認められなかった場合はどうする?

家庭裁判所に相続放棄の申述が却下されてしまった場合、もう一度申請することは出来ません。

しかし、却下されてから二週間以内に「即時抗告」をすることが出来ます。

即時抗告とは、家庭裁判所の「却下」という判断に不服があるとして、高等裁判所に審理をしてもらうことです。

即時抗告で、審理の結果、家庭裁判所の判断に誤りがあったとなれば、相続放棄が認められる場合があります。

ただし、よほどの事情や事実が無い限り、一度下された判断を覆して相続放棄が認められることはないと考えておいたほうがよいでしょう。

それでも、即時抗告で相続放棄が認められたケースはあるので、少しでも可能性を上げるためには、必ず弁護士に依頼し、法的な根拠を用意しておくべきです。

却下されてから二週間以内ということは、準備期間も短くなってしまうので、出来るだけすぐに依頼しましょう。

 

まとめ

相続放棄は3ヶ月という期間のある手続きなので、管轄裁判所など間違えないようできるだけ早い段階から手続きをする必要があります。

相続放棄は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所が管轄となります。

最後の住所地がわからない場合は、被相続人の本籍地の市区町村役場から戸籍附票を取得すれば記載があるので、管轄の家庭裁判所を調べておきましょう。

自己のために相続の開始があったと知った日から3ヶ月以内に手続きしなかった場合は、原則として相続放棄の申述は不受理となりますが、3ヶ月経過後でも例外的に認められる場合もあるので、あとから借金が発覚した場合はできる限り早めに弁護士に相談しましょう。