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遺産相続で時効が問題になる場面とは?

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遺留分減殺請求権には時効がある

民法で、遺産相続に関して時効の規定が設けられているものとして、遺留分減殺請求権があります。遺産相続の際に遺留分の侵害が問題になるケースは多いため、時効には注意が必要です。

そもそも遺留分とは?

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に与えられた相続財産の最低取得割合のことです。遺留分は、遺言によっても侵害することができません。

遺留分は、直系尊属のみが相続人であるケースでは相続財産の3分の1、それ以外のケースでは相続財産の2分の1となっています。相続人が複数いる場合には、この遺留分を法定相続分で分けることになります。

たとえば、相続人が被相続人の妻、長男、次男の3人である場合、3人で相続財産の2分の1の遺留分を持つことになります。各相続人の遺留分はこれを法定相続分に応じて分けることになりますから、妻が4分の1、長男及び次男がそれぞれ8分の1となります。

遺留分減殺請求とは?

遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された人が、遺留分を侵害している人に対し、遺留分の取戻しを請求することです。

たとえば、亡くなった父親の相続人が長男と次男の2人であるケースでは、長男と次男はそれぞれ相続財産の4分の1の遺留分を持つことになります。そのため、たとえ父親が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残していても、長男が全財産を相続した際に、次男は長男に対し遺留分減殺請求をして自己の遺留分を取り戻すことができます。

遺留分減殺請求権の時効

遺留分減殺請求権の時効は、相続の開始と減殺すべき遺贈・贈与があったことを知ったときから1年間となっています。また、相続の開始や遺贈・贈与を知らなった場合でも、相続開始から10年が経過すれば、遺留分減殺請求権は消滅することになっています。

 

相続回復請求権にも時効がある

民法で遺産相続に関して時効の規定が設けられているものには、相続回復請求権もあります。相続回復請求権は実務においてはあまり利用されることがありませんが、次のような内容になっています。

相続回復請求権とは

相続回復請求権は、本来相続人でない人が遺産を相続しているため、遺産を相続できなかった相続人が、遺産の取り戻しを請求する権利になります。相続欠格や廃除により相続権を失った人が遺産を事実上支配・占有している場合などに、相続回復請求権を行使して相続権の回復を図ることができます。

相続回復請求権の時効

相続回復請求権の時効は、相続権を侵害された事実を知ったときから5年となっています。また、たとえ相続権の侵害の事実を知らなかったとしても、相続開始のときから20年を経過すれば、相続回復請求権は消滅します。

 

預貯金の相続手続きにも遺産相続の時効が関係してくる

遺産相続において、時効が問題になるものとして、金融機関における預貯金の相続手続きがあります。

預貯金の相続手続きとは

亡くなった人名義の預貯金は、金融機関がその人が亡くなったことを知ったときに凍結され、一切の入出金ができなくなります。凍結を解除するためには、口座名義人の相続人が、預貯金の相続手続きを行う必要があります。

預貯金の相続手続きは、金融機関に対し、各金融機関で定められている必要書類を提出して行います。預貯金の名義変更といわれることもありますが、実際には口座の名義を変更するわけではなく、被相続人の口座は解約になり、相続人の口座へ移し替えることになります。被相続人の口座を解約した後、現金で払い戻しを受けることも可能です。

預貯金の払戻請求権の時効

預貯金の払戻請求権には時効があります。銀行預金については、商法が適用されるため、消滅時効は5年となります。信用金庫、信用組合、労働金庫などの預金には、民法上の10年の消滅時効が適用されることになります。

遺産相続手続きをせずに、放置したまま時効期間が経過すると、預貯金の払い戻し請求権が消滅し、払い戻しが受けられなくなる可能性があります。なお、時効期間が経過しても、債権者である金融機関側が時効を援用しない限り、時効の効力は生じません。

現状では、金融機関は時効を援用することはまずありませんので、時効期間経過後でも相続手続きをして払い戻しを受けることは可能です。しかし、被相続人の預貯金を長期間放置していると、次の相続が起こるなどして手続きが複雑化することもありますから、遺産相続の際には時効を意識して、できるだけ早く相続手続きをすませた方がよいでしょう。