遺産相続・遺産分割 2017.10.04

遺産相続の際に起きやすいトラブルとは?遺産分割をするなら知っておくべきポイント

遺産分割には様々なトラブルが起こり得ます。
特に、遺産が不動産の場合には、その分割が容易でないことから複雑な問題に発展することもあります。
そこで、よくある遺産分割トラブルの例を挙げて、その解決策を具体的に検討してみましょう。

記事ライター:今井弁護士事務所

遺産分割のトラブル

遺産分割は、家や土地、預金など金銭的価値があるものを分割するので、トラブルが生じやすいものといえます。

実際、裁判所に申し立てられる遺産分割調停は、年々増加傾向にあります。

調停は、相続人の話し合いだけでは解決できない場合に、調停委員を交えて分割する手続きです。したがって、調停の申立て件数が増加したということは、それだけ相続トラブルが増加していると言えます。

遺産分割のトラブルが起こると、様々なデメリットが生じます。

たとえば、トラブルが長引くと、その期間ずっと遺産を分割することができないので、遺産の活用をすることもできなくなります。また、親族間で長い間争いを続けることで、精神的な負担も大きくなります。

さらに、相続税の控除を受けられなくなるという現実的なデメリットもあります。相続税の控除は、相続開始後10ヵ月と定められているので、トラブルが長引くとその分デメリットが生じることになります。

では、相続トラブルと言っても、実際にはどのような事例があるのでしょうか。

以下では、よくあるトラブル事例を紹介して、その解決方法を説明していきたいと思います。

 

具体例~不動産トラブル~

遺産に不動産がある場合、トラブルに発展するケースがあります。

「亡くなった父親には、長男・次男(私)・長女の三人の子どもがいます。母親はすでに他界しており、他に相続人はいません。そして、父親には、不動産として家を所有していました。この家には、生前より父親とともに長男が居住しています。この度の相続で、長男は、『土地・建物は私が相続する』と主張しています。しかし、父親には他にめぼしい遺産がなく、また、長男は預金等の財産はありません。この場合、どのように相続するのが良いのでしょうか。」 土地・建物といった不動産の場合、預金等とは異なり、相続人間の分割が困難となります。 不動産は、それ自体物理的に分割して取得することができないからです。

それでは、不動産は実際にどのように分割されるのか、説明していきます。

 

不動産の分割方法

不動産の分割方法としては、

「1」現物分割

「2」代償分割

「3」個別分割

「4」換価分割という四つの方法があります。

「1」現物分割とは、不動産を、相続分に応じて共有することで分割する方法を言います。 たとえば、上の例でいうと、兄弟はみな平等な相続分を有するので(民法900条4号)、3分の1ずつ(の持分権を)共有することになります。 共有とは、簡単に言うと、不動産をみんなで所有している状態のことです。 したがって、不動産を売却する場合には、全員の同意が必要となるなど、一人で所有するよりも制約はかかることになります。

「2」代償分割とは、相続人のうち一人が不動産を所有し、その相続人から他の相続人代償として金銭を支払う方法です。

「3」個別分割とは、複数の不動産がある場合に、不動産ごとに相続する方法を言います。 上の例でいうと、家が複数ある場合、一つの家は長男、もう一つの家は次男、もう一つの家を長女、というように相続することを言います。

「4」換価分割とは、不動産を売却して、代金を相続分に応じて分割する方法を言います。

 

解決策

以上を前提として、先に挙げた例を具体的に検討してみましょう。

今回は、不動産は一つなので、「3」個別分割の方法は使えません。 長男は、遺産を相続したいと言っているので、長男の希望通りに分割しようという場合には、「2」代償分割が当てはまります。

具体的には、長男が一人で家を相続し、次男・長女には、家の評価額の3分の1ずつの金銭を代償として支払うことになります。 しかしながら、長男は、現金等めぼしい財産を持っていません。そうすると、長男は、次男・長女に金銭を支払うことなく一人で家を使用することになってしまいます。

したがって、この方法では、平等に分割することができないものといえます。 そこで、次に、「4」換価分割を見てみましょう。 換価分割であれば、家を売却し、その売却額を兄弟で三等分することができるので、公平に分割することができます。 しかしながら、長男は父親の生前からずっと家に居住しており、他に住居を確保しなければならないことから、長男の希望は満たされないことになります。 また、兄弟の中で長男だけではなく、長女も実家を売却したくないという場合や、家を売却しても売却額が低額である場合などには、適当な分割とは言えません。

そして最後に、「1」現物分割をみてみましょう。 現物分割の場合、家を長男・次男・長女で共有することになります。 この場合、共有した状態で、長男が家をそのまま居住するという形態をとることができますは、たとえば長男が単独で家を売却したり、建て替えたりすることはできなくなります。 また、相続を重ねて権利関係が複雑になる場合もあるので、デメリットは大きくなることがあります。

 

まとめ

 

これまで不動産の相続トラブルについて説明してきました。 相続はトラブルになりやすいにもかかわらず、不動産の場合にはさらに複雑なトラブルを引き起こしかねないのです。

このようなトラブルを避けるためにも、日ごろから父親を含めた兄弟間で、良好な関係を築き、不動産をどのように相続するのかについて話し合うことも大切です。 以上

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