遺産相続・遺産分割 2018.02.10

遺産相続における調停手続について

被相続人の死後には、遺産相続を巡って相続人である家族の間で争いが起きてしまうことがあります。特別にお金持ちではなくても、遺産相続のはずが「遺産争族」状態へ発展してしまうことは考えられるものです。

相続人の間で話し合いを重ねても遺産相続について解決できない場合には、家庭裁判所へ調停事件として申し立てをすることになります。この記事では、遺産相続に関する調停を行わなければならないケースや調停の流れ、具体的な手続き方法などについて詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産相続について調停手続きを行うケースとは

遺産相続において相続人が複数いる場合は、遺産の分割に関してそれぞれの意見がまとまらず、遺産相続争いに発展してしまうことがあります。

このように遺産相続に関して当事者では収集のつかない事態が生じた場合に、家庭裁判所に介入してもらって遺産相続について話し合いを持つことを「遺産分割調停」と呼びます。

調停は遺産相続問題の解決のための第一段階であり、調停で遺産相続問題を解決できなかった場合は審判(裁判)へ進むこととなります。

 

遺産相続について調停手続きを行う際の流れ

遺産分割調停については、次のような流れで進行します。

1.遺産分割協議

遺産相続に関する遺言がない場合には、相続財産を相続人でどのように分割するかを協議する場がもうけられます。

この段階で遺産相続に関する協議がまとまらない場合や、相続人の誰かが協議の進展を妨げる目的で理由なく協議に参加しない場合には、遺産相続手続きを進めるために調停手続きを踏むことになります。

2.遺産分割調停申立書の作成・申し立て

遺産分割調停申立書を、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意のもとで定めた家庭裁判所へ提出し、調停の申し立てを行います。

3.調停期日に出頭・話し合い

調停の申立てが受理されると、所定の期日に出頭するよう各相続人へ通達がなされます。裁判官または裁判所が選任した調停委員を相続人の間に入れて、遺産相続に関する話し合いを行います。

この時、相続人同士は顔を合わせることなく話し合います。担当弁護士がいるなら、弁護士を伴って出頭することもできます。

1回の話し合いで決着がつかない場合は、さらに別日に出頭して話し合いの回数を重ねていきます。

4.調停の成立・不成立

遺産分割調停によって遺産相続についての話し合いがまとまった場合は、調停調書が作成されて調停は終了します。調停調書には法的な効力があるため、調停で話し合われた事柄を反映して遺産相続を行うための法的な拘束力を持ちます。

調停を経ても、なお遺産相続について話し合いがつかない場合は、調停不成立となります。この場合は遺産分割審判に移行します。別途審判の申立てをする必要はありません。

 

遺産相続について調停手続きを行う際の概要

では、家庭裁判所で調停手続きを行う際の具体的な手順や必要書類についてご紹介します。

1.調停の申し立てができる人

遺産相続の当事者である共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人のみが調停手続きを申し立てることができます。

2.調停を申し立てる裁判所

調停を起こす相手方相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所、または被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所など、当事者が合意で定める家庭裁判所へ申し立てることができます。

3.調停の申し立てに必要な費用

被相続人1人につき、収入印紙1200円分が調停費用として必要です。連絡用の郵便切手は、各裁判所によって必要な金額が異なっていますので確認して下さい。

4.調停の申し立てに必要な書類

・申立書1通、および相手方の人数分の写し

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

・相続人全員の住民票または戸籍附票

・遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書および固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写しなど)

 

まとめ

遺産相続に関しての争いを治めるには、調停手続きを踏むことも有効です。しかし調停が不成立になると審判に発展し、心身共にさらに多くの負担がかかります。遺産相続において譲歩できる部分は譲歩し、調停や審判が長引かないよう努力すれば、遺産相続がきっかけで家族の関係が険悪になるという悲しい事態を防ぐことができるでしょう。

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