遺産相続・遺産分割 2018.02.13

遺産相続において遺産の配分に影響を与える寄与分とは?

被相続人の生前に、被相続人の仕事を長年手伝っていたり、被相続人の介護を献身的に行っていたりした相続人がいる場合は、遺産相続の際にその相続人が受け取る遺産配分を増やすための「寄与分」という取り決めがあります。

寄与分は遺産相続で、遺産の配分に大きく影響するものです。そのため認められるのは簡単ではありません。この記事では、遺産相続において遺産の配分に大きく影響する寄与分の概念と、遺産相続で配分である寄与分を受け取ることのできる相続人の条件などを紹介します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産相続における配分「寄与分」とは

遺産相続で遺産の配分に影響する寄与分は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人に与えられる、プラスαの相続分です。

例えば、相続人である長男が被相続人である父の会社で懸命に働き、業績向上に大きく貢献したような場合、遺産相続の際には長男の相続分には寄与分が考慮され、他の相続人より多く配分されることがあります。

また、相続人が被相続人の不動産管理を行うことで被相続人の支出を防いだような場合にも、遺産相続の際に寄与分が考慮され、多く配分されることがあります。

このように遺産相続で遺産の配分に影響する寄与分は、民法で次のように定められています。

民法第904条の2第1項「寄与分」
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定によって算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

遺産相続で遺産配分に影響する寄与分が考慮される例についてまとめると、次のようになります。

1.被相続人の事業への労働力提供や、財産の給付

被相続人の事業を事実上無給で手伝い被相続人の事業に大きく貢献した場合や、被相続人のために生活資金や医療費として資金を提供した場合などが考えられます。

2.被相続人の療養介護に努めたこと

家を出て働いていた相続人が、被相続人の療養介護のために仕事を辞め被相続人の死亡まで献身的に介護に努めたなどです。これによって、介護施設に入所するための費用の支出を免れた場合にはさらに寄与分が考慮され、遺産配分が増えることもあります。

3.その他

相続人が被相続人の財産の管理を買って出たために、被相続人の支出が抑えられた場合なども考えられます。

 

遺産配分に影響する寄与分の意義

遺産相続において遺産配分に影響する寄与分ですが、なぜこのような概念が生まれたのでしょうか?

遺産相続では遺言や特別の事情がない場合、民法で定められている遺産相続の法定相続分をベースに配分されます。

しかし一般的な心理として、被相続人のために特別に貢献した相続人への遺産配分と、そうでない相続人の遺産配分が同じというのは不公平でしょう。遺産相続において、このような不公平感を解消するために配慮されているのが寄与分です。

しかし単に被相続人の事業を手伝ったり、介護をしたりした程度で、財産の増加や維持に特に貢献していないのであれは、遺産相続において遺産配分を増やすほどの理由とは受け止められず寄与分が認められにくくなります。

また、配偶者や子どもが遺産相続で多くの遺産配分を求めて寄与分を主張しても、特別な貢献ではなく家族や親子として当然の範囲内と判断されれば、遺産相続で配分を増やす寄与分は認められにくくなります。

寄与分は、遺産相続を行う相続人の遺産配分を増やすためのものです。そのため、養子や内縁の妻・夫はどんなに被相続人の財産形成に貢献したとしても遺産相続には参加できず、寄与分の主張もできません。

 

遺産相続の配分に影響する寄与分の決め方とは

民法第904条にあった通り、遺産相続における配分を増やす寄与分の価額は、相続人同士の協議で決定されます。

しかし遺産相続の当事者同士では、「自分だって被相続人のために貢献したのに」「それくらいのことで遺産配分が増えるのはずるい」など、なかなか話がまとまらない事態も予想されます。

遺産相続の当事者同士での協議で解決しない場合は、多くの配分を求める寄与者(寄与分を受ける人)が家庭裁判所に申立て、配分される寄与分を決めてもらうことができます。

寄与分の計算式は、次のようになります。

(遺産総額-寄与分)×相続分+寄与分=寄与者の相続分

 

まとめ

被相続人に特別に尽くした相続人のためには、遺産相続でもらえる遺産配分を増やすための取り決めが設けられています。

しかし、貢献した事柄の多くは記録として残らない場合が多いため、どの程度寄与分を配分するのが妥当かの判断は専門家でも難しいものとなっています。

寄与分について争いが起きそうな場合は、できる限り早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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