遺産相続・遺産分割 2017.10.04

あなたの法定相続分ってどれくらい?

親が亡くなったら、自分はどれくらいの遺産を相続できるのか。
他にも相続人がいる場合、配分はどうなるのか。

この記事では、民法が定めているルールを、簡単にご紹介します。

記事ライター:今井弁護士事務所

相続の方法

今日において相続とは、死者(被相続人といいます)の財産を誰かに帰属させるための制度となっています。 死者の財産を誰に帰属させるかについて、民法は、原則として死者と一定の親族関係のあった者に帰属させるという制度を採用しています。

民法上の制度をもう少し詳しくみていきましょう。

まず、被相続人の財産を相続人が相続によって承継する方法は2つあります。

1つ目は、被相続人の相続の仕方について遺言という形で意思を表示している場合です。この場合には、原則として遺言に従って処理されます。

2つ目は、遺言がない場合です。この場合、民法が定めたルールに従って相続され、これを法定相続といいます。そして、法律によって承継者としてあらかじめ定められている人を法定相続人といいます。 つまり、民法はあらかじめ、死者と一定の親族関係のあった人を相続人として法定していて、これが原則となりますが、例外的に、遺言によって特定の人に財産を帰属させる自由も一定程度認めているということです。

このように、法定相続は、遺言がない場合に適用されるものですが、日本では多くの相続が法定相続のルールに従ってなされています。

 

相続分についてのルール

相続についてのルールは、相続が“いつ開始し”、“誰が”、“何を”、“どれだけ”相続するか、という点に関するものが定められています。

この記事のテーマである「法定相続分」というのは、“どれだけ”相続するか、すなわち遺産の配分割合の問題です。

さっそくみていきましょう。

遺言によって遺産の配分割合について指定がなされていない場合、原則に立ち戻って、法定された相続分にしたがって遺産が割り振られます。先ほども述べたように、日本では多くの相続が遺言相続ではなく法定相続のルールに従ってなされていますので、法定相続分に従って遺産の配分がされることが多いです。その意味で、法定相続分について知っておくことは、あなたにとって役立つものになると思います。 民法が定める法定相続分は、下の表のとおりです。

相続人には、配偶者相続人(妻又は夫のこと)と血族相続人(血のつながりにより相続が認められている相続人のこと)とがあり、配偶者相続人は常に相続人となりますが、血族相続人には順位が存在します。 血族相続人内では、第1順位として、被相続人の子(もしくはその代襲相続人である直系卑属※「代襲相続人」の記事へのリンク?)、 子および直系卑属がいない場合に、第2順位として被相続人の直系尊属、 直系尊属もいない場合に、第3順位として被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

【参考】

親族は配偶者を別として、直系親族と傍系親族に分けられ、直系親族とは、祖父母-父母-子-孫などを、傍系親族とは、兄弟姉妹やいとこなどをいいます。 そして、親族は、世代によって尊属と卑属とに分けられ、尊属とは、自分よりも前の世代に属する人で、祖父母・父母・叔父叔母をいいます。 他方、卑属とは、自分より後の世代に属する者で、子・孫・甥・姪をいいます。 例えば、父にとって息子は子ですから、直系親族にあたり、かつ、卑属なので、直系卑属ということになります。

(A) 子と配偶者の場合

子供と配偶者が相続人であるときは、子供の相続分と配偶者の相続分は各2分の1となります。なお、子供が複数人いるときは、配偶者の相続分は2分の1のままですが、子供たちの中で2分の1を人数の頭割りで均等に分けます。

※図挿入

コラム的な話ですが、実は、昭和55年の改正で、配偶者が子供とともに相続する場合の相続分が3分の1から2分の1に変更になって、今に至っています。

改正の背景には、特に、残された奥さんの生活保障を重視する考慮があります。もちろん、「配偶者」とは夫婦の双方を含む言葉なので、奥さんが先に亡くなって、旦那さんが残される場合もありますが、旧来の日本社会では、夫が働いて収入を得、妻が家事労働に従事する、という形が多かった結果、財産的な意味で妻の立場が弱かったのです。

(B) 配偶者と直系尊属の場合

配偶者と直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1となります。

(C) 配偶者と兄弟姉妹の場合

配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります。なお、兄弟姉妹が複数人いるときは、兄弟姉妹の中で4分の1を人数の頭割りで均等に分けます。

(D)・(E) 配偶者が既に他界している場合

配偶者相続人がいないため、血族相続人の中での順位の話だけになります。

すなわち、第1順位の子およびその代襲相続人である直系卑属がいれば、その人が全てを相続により承継することになります。これが(D)のパターンです。  第1順位の人がいなかった場合、第2順位以降の人がいれば、その人が全てを相続により承継します。これが(E)のパターンです。

 

結びに

この記事ではご紹介できませんでしたが、近年、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法の規定を違憲とする最高裁判所の判断が出され、話題になりました。そして平成25年12月4日に民法が改正され,非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の半分とする民法900条4号ただし書きの規定は撤廃されました。この改正は,同月11日から既に施行されています。

そもそも相続とは何なのか、相続分はどのように決められているのか。

この記事のみならず、多くの情報に触れ、相続についての理解を少しでも深めていただければと思います。

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