相続人・遺留分 2018.02.24

未成年者が相続人となる場合に必要な特別代理人とは

遺産相続の際には、遺産を相続人の中でどのように配分するかについて、遺産分割協議を行って決めることがあります。遺産分割協議には、相続人全員が参加しなければならないと法律で定められています。

しかし法律では、20歳未満の未成年者の相続人が遺産分割協議に出席することは認められていません。未成年者には、法的な判断能力がないとされているためです。相続人の中に未成年者がいる場合は、特別代理人を選任しなければなりません。

記事ライター:棚田行政書士

未成年の相続人には「特別代理人」が必要

未成年の相続人がいた場合でも、ただ単に除外して遺産分割協議を進めれば良いという訳ではありません。遺産分割協議は相続人全員の参加および合意が必要なため、未成年の相続人を除外して行われた遺産分割協議は無効となってしまいます。

そこで、未成年の相続人がいる場合には「特別代理人」を立てる必要が生じます。普通に考えると親などの親権者が務めることができそうですが、相続においてはそうとは限りません。

未成年の相続人がいる場合には、その親も同時に相続人である可能性が高くなります。そして親も子も相続人という同じ立場である場合、親子の間には利害関係が生まれてしまいます。

例えば、母親と未成年の子どもが相続人である場合、母親が未成年の子どもの代理人も兼ねてしまうと、母親一人ですべての遺産を相続するように手続きすることも事実上は可能になってしまいます。

このような事態を防ぐために法律では、相続人である親が未成年の相続人である子どもの特別代理人にはなれないと定めています。

 

未成年の相続人に特別代理人を立てないとどうなる?

もし、未成年の相続人のために特別代理人を立てずに遺産分割協議を行った場合にはどうなるのでしょうか?

この場合の遺産分割協議は、代理を務める権利がないにもかかわらず代理行為を行ったり、代理権限を越えて代理行為を行ったりするという「無権代理行為」に該当します。

そのため、未成年の相続人である子どもが成人した後に遺産分割協議の内容を否認した場合は、遺産分割協議は最初からやり直しとなります。

 

未成年の相続人のための特別代理人の選任申立ての方法

未成年の相続人がいる場合は必ず、家庭裁判所へ特別代理人の選任の申立てを行います。申立てを行うことができるのは、未成年の相続人の親権者か利害関係人です。

申立てする家庭裁判所は、未成年の相続人である子どもの住所地を管轄する家庭裁判所です。未成年の相続人である子ども一人につき収入印紙800円分の費用と、各家庭裁判所によって異なる連絡用切手代がかかります。

申立てに必要な書類は、次のものです。

1.申立書

2.標準的な申立添付書類
・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
・利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)等)
・(利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)等)

申立ての前に入手できない戸籍などがある場合、その戸籍などは申立ての後に追加提出することも認められています。場合によっては、この他の書類の提出を求められる可能性もあります。

 

未成年の相続人のための特別代理人の候補とは

未成年の相続人のための特別代理人には、特に資格が求められているわけではありません。正常な判断能力や知力を有しており、未成年の相続人の代わりにしっかりと特別代理人を務めてくれる人であれば誰でもなることができます。

未成年の相続人と利害関係にない人であれば、親族でも特別代理人となることができます。一般的に多く見られるのは、未成年の相続人の祖父母や、おじ・おばなど、相続人ではない親族です。

もし親族内に適任な人物がいない場合は、弁護士や司法書士などを特別代理人とすることもできます。また、特別代理人は子どもの人数と同じ数だけ必要です。未成年の相続人が2人いるなら、特別代理人も2人選任しなければなりません。

 

まとめ

未成年の相続人がいる場合は、必ず特別代理人を選任して遺産分割協議を行います。特別代理人は、未成年の相続人が成人した時に不満に思うことのないよう、責任を持って遺産分割を行うという重責を担っています。特別代理人になることを検討する場合には、このような点をよく理解して、引き受けるかどうかを決定しましょう。

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