相続人・遺留分 2018.03.16

相続人という言葉の意味と範囲とは?

遺産相続の際には、相続人という言葉を用います。普段の生活ではなじみのない意味の言葉ですが、遺産相続は誰にでも起こり得ることであり、いつ始まるか予測がつかないことでもあります。

相続人の意味を正しく理解しておくことで、多くの人が人生で少なくとも一度は経験する遺産相続を円滑に進めることができるでしょう。相続人の意味とその範囲、相続人の立場についても解説します。

記事ライター:棚田行政書士

相続人の意味とは

相続人の意味とは、遺産相続において被相続人の財産を受け継ぐ権利を有している人のことを指しています。遺産相続は被相続人の死亡からスタートするため、相続人はその瞬間から相続人となります。

相続が意味するのは、被相続人が所有していた財産や権利のすべてを受け継ぐということです。預貯金や不動産などのメリットをもたらす財産や権利だけでなく、債務や責任も同時に受け継ぐことを意味しています。

相続人と被相続人は言葉が似ているため意味合いが混同されがちですが、被相続人とは遺産を遺して亡くなる側の人という意味であり、相続人とは逆の意味になります。

相続人が誰なのかは民法で定められているため、相続人のことを「法定相続人」と呼ぶこともあります。

しかし、遺言書で相続人が指定されている場合や相続放棄をする相続人が出てくると、必ずしも当初の法定相続人が相続するとは限らなくなるため、法定相続人=実際の相続人という意味になるかはケースバイケースとなるでしょう。

 

相続人の範囲とは

相続人は、「配偶者相続人」と「血族相続人」の、2種類に分類されています。

配偶者相続人とはそのままの意味で、被相続人の配偶者のことを意味します。配偶者が存命であれば、どんなケースでも必ず相続人になるという特質を持ちます。ただし法律上、婚姻関係を結んでいない内縁の夫や妻は、配偶者相続人にはなれません。

血族相続人とは、被相続人の親族の相続人を意味しています。血族相続人は、第一位から第三位まで、遺産相続の権利の順位が定められています。

1.第一順位

被相続人の子どもや孫(直系卑属)

被相続人の実の子どもだけでなく、養子縁組を結んでいる養子や認知した非嫡出子、まだ生まれていない胎児も第一順位の相続人になります。

2.第二順位

被相続人の父母や祖父母(直系尊属)

第一順位の相続人がいない場合、父母や祖父母が相続人になります。父母も祖父母も存命の場合、被相続人により近い世代の父母の方を優先して相続人とします。

3.第三順位

被相続人の兄弟姉妹

第一順位、第二順位の相続人がどちらもいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

 

全血兄弟(両親を同じくする兄弟姉妹)でも、半血兄弟(片親のみが同じ兄弟姉妹)でも区別なく相続人になることは可能ですが、半血兄弟の場合は全血兄弟の相続分の半分が相続分とされます。

血族相続人は、配偶者と子どもや、配偶者と父母など、どんなケースでも必ず相続人となる配偶者とセットになって相続を行います。血族相続人の場合は、上位の相続人がいない場合に限って相続人になります。

 

相続人の立場は不動のもの?

相続人または法定相続人という言葉が意味するものは、遺産相続で相続する権利が確約されているわけではありません。遺産相続が始まった時点で第一順位の相続人でも、自分以外の他に相続人がいないとしても、相続人の立場を失う可能性はあります。

そのひとつが、相続欠格という理由です。次のような行為をした場合、その相続人は被相続人の意思に関係無く自動的に相続権を失い、遺贈を受けることもできなくなります。

1.被相続人や先順位の相続人を殺害または殺害未遂して実刑を受けた
2.被相続人が殺害された事実を知りながら隠匿していた
(判断能力のない人や、犯人が自分の配偶者または直系血族であった場合には例外)
3.詐欺や脅迫によって、被相続人の遺言作成や変更を妨害、または強要した
4.被相続人の遺言を変造・破棄・隠匿した

被相続人が、自分の生前に特定の相続人の権利をはく奪することも可能です。それが、相続廃除と呼ばれるものです。

1.被相続人への虐待

常習的に暴言を浴びせたり、介護や通院が必要な状態になっても放置して衰弱させたりした場合など

2.被相続人への重大な侮辱

常日頃から公然と侮辱したり、被相続人のプライバシーを故意に侵害し続けたりした場合など

3.その他著しい非行

事情もないのに仕事に就かず金銭を要求し続けたり、身勝手な理由で子どもや配偶者を捨てたりした場合など

遺言書の内容は法定相続よりも優先されるため、自分の方が上位だったとしても、遺留分は別として相続できる財産が減る可能性があります。

 

まとめ

相続人という言葉が意味しているのは、相続する権利を持っているということになります。相続人には法定の順位があり、死亡した時点の家族構成などによって相続人となる人が変わってきます。

そのため、相続が発生したら、まずは被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本や除籍謄本などを取得し、正確な相続人を確定させるようにしましょう。

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