相続人・遺留分 2018.04.22

相続人の中に相続欠格に該当する人がいる場合

遺産相続で相続人となれば、被相続人の遺産をいくらか譲ってもらうことができます。しかし相続人という立場は、何があっても守られる権利ではありません。
相続人としてふさわしくない行為をした相続人が「相続欠格」に該当する場合には、相続人としての権利を失うことになります。
ここでは、遺産相続における相続欠格とは何か、相続欠格に該当する相続人がいるならどうすれば良いのかなどについて、詳しく説明していきます。

記事ライター:棚田行政書士

相続人がその立場を失う「相続欠格」

本来相続人となるべき人が、遺産を受け継ぐ者として到底ふさわしくない行為をした場合には、相続人としての権利を奪われる場合があります。

それが、相続欠格です。

次の項目で紹介する相続欠格行為を行った相続人は遺産を相続できないだけでなく、遺贈を受ける権利も失います。

 

相続欠格に該当する行為とは

相続欠格となるのは、次の5つの事由のいずれかに該当する場合です。

被相続人や先順位、あるいは同順位相続人を殺害、または殺害しようとした

遺産相続において自分の取り分を増やすためなどの利己的な動機から、被相続人を殺害したり先順位の相続人や自分と同順位の相続人を殺害した者については、当然ながら相続欠格となります。

実際に殺害していなくても、殺害未遂の場合も相続欠格事由には該当します。どちらも、実刑が課されている場合です。

被相続人が殺害されたことを知りながら隠匿していた

被相続人の死因が殺人によるものであることを知っていながら、それを隠していた者についても、相続欠格となります。

ただし、認知症や知的障害などで判断能力のない人や、犯人が自分の配偶者または直系血族であった場合には、心情を考慮して欠格の例外とされています。

詐欺や脅迫によって、被相続人の遺言作成や変更を妨害した

遺言書を作成する権利は、被相続人が当然に持っている権利です。被相続人が遺言書を作成することや以前に作成した遺言書の内容を変更することを、詐欺や脅迫といった手段を用いて妨害した場合も、相続欠格となります。

詐欺や脅迫によって、被相続人の遺言について強要した

被相続人に無理やり遺言書を書かせたり、以前に作成した遺言書の内容を変更するよう強要したりした場合も、相続欠格となります。

被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した

被相続人の遺言書の内容を偽造したり、捨てたりすることも相続欠格の事由です。ただし、間違って捨ててしまった場合や、遺言書があることを知らずに自宅に置いていたなどの場合は、例外とみなされる可能性があります。

 

相続欠格に該当する相続人がいたらどうなる?

このような著しい非行を行った者は相続欠格となることで、自動的に相続人としての立場を奪われます。本人や被相続人が、何か特別な手続きをする必要もありません。

相続人の中で相続欠格に該当する者がいた場合、その者に子どもがいるのであれば、子どもが代襲相続人となります。

代襲相続とは、本来であれば遺産相続において相続人となっていたはずの親が死亡や相続欠格によって相続できなくなった場合に、子どもや孫が親の代理として相続人となることです。

相続欠格に該当した者が被相続人の子どもである場合にはその子ども、つまり被相続人の孫が代襲相続人となり、遺産を相続することができます。

被相続人の子どもの代襲相続では、孫、ひ孫と、下の代へ無限に代襲相続の権利を繰り下げることが可能です。孫はいたものの、すでに亡くなっているという場合は、ひ孫がいるならひ孫が代襲相続人になることができます。

また、相続欠格者が相続人でなくなることで同順位の相続人が一人もいなくなる場合は、次順位の相続人が相続人となります。

 

相続欠格に満たない非行を行う相続人。どうしたら良い?

犯罪や詐欺などの事実はないとしても、あまりに素行が悪く、遺産を相続させたくないと思う相続人がいるかもしれません。相続欠格には該当しない相続人から相続の権利を取り上げる方法には、「相続廃除」があります。

これは、被相続人に対して著しい虐待を日常的に繰り返した、プライバシーを侵害し続けることで名誉を損なった、理由なく働かずに金銭を要求し続けたなど、相続人としてふさわしくない行為です。

廃除したい相続人がいる場合は、家庭裁判所へ廃除請求の申立てを行います。廃除を認めるかどうかは、家庭裁判所が個別の事情を深く探って判断することになります。理由が不十分だと、廃除は認められない場合もあります。

 

まとめ

相続欠格に該当する者がいる場合は、自動的に相続人から外れます。その者に子どもがいるなら代襲相続が起き、子どもや同順位の相続人がいない場合には次順位の人に相続権が移行します。

相続廃除によって相続権を奪うこともできますが、本当に深刻な理由がない限りは認められにくいようです。

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