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いざという時に慌てないために知っておきたい相続税の「納税地」について

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相続税の納税地を決める要素とは

「住所地」と聞くと、住民票を置いている場所であると考えがちですが、相続税手続きに関しては「本人が実際に生活していた場所」を指し、相続税の納税地と呼んでいます。

したがって、住民票が置いてある土地とは別のところで暮らしていた場合、相続税の納税地は住民票上の住所ではなく、実際に生活していた土地を管轄する税務署に申告することになるのです。

国税庁のホームページでも、相続税法第62条に基づき、実際に居住する場所が相続税の納税地となる旨が明記されています。

基本的には住民票を置いている場所が納税地となるものの、実際には生活の実情に即した場所が相続税の納税地となる、と述べているのです。このことから、国税庁では、生活実態をより客観的に判断して納税地を決定していることがわかります。

相続税の申告と納付が、上記の法律に基づき、居住地の税務署に対して行う必要があるのはこのためなのです。

 

老人ホームに入所していた場合の相続税の納税地

老人ホームに入る高齢者は、自宅とは異なる場所で介護支援等を受けながら生活しています。終身型の施設の場合では、入所したまま年齢を重ね最期を迎えるのが一般的です。

もし本人が自宅を生活拠点としており、その生活の過程で亡くなった場合、相続税の納税地は自宅の住所になります。しかし、自宅を離れて老人ホームに入所し、その間に入院する等して亡くなった場合は、生活の拠点であった老人ホームの住所地が相続税の納税地となる点に注意しましょう。

実際の家庭裁判所審判例でも、相続税法附則第3項に基づき、「被相続人死亡時点での住所地が客観的に生活の本拠となっているかどうかで判断すべきである」という解釈が行われています。

つまり、老人ホームには生活を営む上で必要な環境があり、生活する上で必要な介護サービスを受けることができ、終身利用が前提となっているために、相続税の納税地として認められることになるのです。

以上のことから、老人ホームに入所している場合は、その相続税の納税地は老人ホームの住所となり、そのエリアを管轄する税務署に対して申告と納付を行うので、予め認識しておきましょう。

 

相続税の申告書はどの税務署に提出すれば良いか

相続税の納税地がわかったら、次に被相続人の確定申告書を提出し相続税を納付しなければなりません。この時、申告先となるのが、相続税の納税地が属する所轄税務署です。

自分や家族の場合はどこが所轄税務署になるかわからない場合、国税庁のホームページで相続税の納税地を検索し確認することが可能ですので確認してみましょう。

郵便番号や住所から税務署を検索することもできますし、日本地図から国税局名や都道府県名をクリックして該当税務署を調べることもできます。

 

相続税の納付期限と納付方法

相続税の納税地の次に注意しなければならないのが、相続税の納付期限です。

相続税の申告書は「相続が開始したことを知った日の次の日から10ヶ月以内」に、所轄の税務署に対して行う必要があるからです。

例えば、被相続人が1月1日に亡くなった場合、申告期限は同年11月1日であり、その日が土日・祝日と重なった場合は翌平日が申告期限となります。

期限内に申告しなかったり相続した財産額より少なく申告したりした場合は、相続税以外に加算税や延滞税が課せられることもあるので注意しましょう。税金は、郵便局や金融機関等で納めることができるので、期限をしっかり守り納税することが大事です。

なお、税金は原則的に一括現金払いですが、金額が大きい等、相応の理由がある場合は延納や物納という方法もあります。延納は、相続税の総額を数年に分けて納付する方法で、物納は相続した財産を相続税に充当する方法です。

ただし、誰でも簡単に延納や物納ができるわけではありません。相続税申告書の提出期限内に、相続税の納税地を管轄する税務署に申請し許可を得る必要があります。

 

まとめ

相続税の納税地という言葉は一般的には浸透していないため、いざという時に慌てやすいことだと言えそうです。どうしても、住民票に記載の住所地が基本になると考えてしまいますが、相続の場合は、あくまでも生活実態のあった居住地が相続税の納税地になる点を改めて確認しておきましょう。

どうしても自分達だけで対応しきれない場合は、弁護士等に相談することも大切です。