土地・不動産 2018.07.26

土地の財産分与が必要な相続で注意しておきたいこと

亡くなった人が土地を持っていた場合、その土地を相続人でどう分けるかで争いが生じてしまうことがあります。ここでは、土地の財産分与の方法や、相続人間の紛争を防ぐための対策について説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続の際に土地があれば財産分与でもめることがある

・相続人は1人ではないことが多い

亡くなった人は、財産を所有することができません。人が亡くなったとき、その人が所有していた財産の所有権は、死亡と同時に相続人へと移転することになります。

相続人というのは、1人とは限りません。配偶者は必ず相続人になりますが、それ以外にも子、直系尊属、兄弟姉妹などが相続人になるケースがあります。相続人は複数いるケースが多く、この場合には「共同相続人」と呼ばれます。

・遺産分割協議で財産分与を行う

相続人が複数いる場合、亡くなった人が所有していた財産は、死亡した時点で共同相続人全員のものになります。遺産の中には、相続開始と同時に当然に分割される可分債権(金銭債権など)もあります。

しかし、ほとんどの財産は相続開始時には共同相続人の共有となり、遺産分割協議という相続人全員の話し合いによって分与することになります。

たとえば、預貯金は性質上、可分債権ですが、判例上、遺産分割協議によって分けるものとされています。遺産分割が終わるまでは、一部の相続人だけで預貯金を引き出すことはできません。

・土地は簡単に分けられないので争いのタネになる

遺産分割協議をするときには、共同相続人全員が話し合いに参加する必要があります。相続人の数が多い場合には、どのように財産分与すべきかで意見がまとまらず、争いになってしまうこともあります。

特に、遺産の中に土地などの不動産が含まれている場合には、遺産分割協議が難航することが多くなります。

・土地を共有にする場合の問題点

相続開始時には、土地は相続人全員で相続分ずつ共有している状態です。土地の財産分与が困難な場合、無理に分けることなく、共有のままにしておくことも可能です。

しかし、土地を共有にすると、売却などが簡単にできないという難点があります。各相続人は自分の持分については自分の意思だけで売却できますが、土地の持分だけを購入する人は、基本的に現れないからです。

土地全体を売却しようとすると、共有者全員が合意する必要があります。1人でも意見が違う人がいれば、売却はできません。同様に、共有者全員が合意しなければ土地を担保に入れるようなこともできませんから、土地を所有していても活用できないことになります。

 

相続時の土地の財産分与で用いられる方法とは?

・土地を売却して売却代金を分ける

相続人の誰も土地を利用するつもりがない場合には、土地を売却してお金に換えて分ける方法があります。土地を売って得たお金を相続分ずつ分ければ、大きくもめることなく財産分与ができます。遺産を売却して売却代金を分ける遺産分割方法を「換価分割」と言います。

・土地を1人が相続し、他の相続人に代償金を支払う

相続人の中に土地を利用したい人がいる場合には、その人が土地を取得し、他の相続人に相続分相当のお金(代償金)を支払う方法があります。代償金を支払うことにより、遺産を分割する方法を「代償分割」と言います。

・土地を分筆する

土地は一見分けられないように思いますが、物理的に分けることも不可能ではありません。1つの土地でも、分筆という手続きをすれば、複数の土地に分けることができます。土地を分筆すれば、それぞれの相続人が独立した土地を所有できることになります。

 

土地の財産分与で相続人がもめないための対策とは?

・遺言を用意しておく

自分の死後、相続人が財産分与でもめることのないようにするために、遺言を残しておくのが有効です。相続では、遺言の内容を優先に財産を分けるものとされています。遺言で特定の人に土地を相続させる旨を指定すれば、土地の財産分与についての争いを防止できます。

ただし、相続人の中に遺留分がある人がいる場合には、遺留分減殺請求されることにより、紛争が生じてしまうことがあります。遺言を書くときには、遺留分に配慮した内容にすると安心です。

・土地を生前贈与する

土地を生前贈与すれば、土地を譲りたい人に確実に譲ることができます。ただし、相続開始前1年以内の生前贈与は、遺留分減殺請求の対象になるので注意が必要です。

それ以前の生前贈与でも、遺留分権利者に損害を加えることを知って行った場合には、やはり、遺留分減殺請求の対象になります。

生前贈与をすると、相続財産を減らして相続税の負担を減らせる場合もありますが、贈与税の負担が大きくなってしまうこともあります。土地の相続対策については、専門家の助言を受けた上で考えるのがおすすめです。

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