土地・不動産 2019.10.04

不動産相続で大トラブル!実家の価値は果たしていくら?

相続トラブルの中でも、泥沼化しやすいのが不動産の絡む相続です。相続関連のサイトでも「不動産相続は揉めやすい」といった記述をよく見かけますが、実際のところ、なぜ不動産相続は揉めやすい状態に陥ってしまうのでしょうか?

そこで今回は、不動産相続で実際にあった事例をもとに、トラブルの原因や対策について解説したいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

不動産と預貯金の違いとは?

そもそも、なぜ不動産相続が揉めやすいのかというと、それにはいくつかの要因があります。

不動産は高額である

相続財産に占める不動産の価格割合を見てみると、ほとんどの相続のケースで不動産が大半を占めているという統計データがあります。

実際、預貯金などの資産はほとんどなくても、自宅などの土地や建物については持っているというケースが多いことから、相続財産全体のうち、その割合のほとんどを不動産が占める場合が多いのです。

不動産を誰が相続するのかによって、遺産分割全体の流れが大きく変わるため、争いの火種となりやすい傾向があるというわけです。

不動産の価値の考え方

預貯金については、銀行から残高証明書を取り寄せれば、そのもの自体の経済的価値はすぐにわかります。あとは、法定相続分に従って分ければ、大した問題にならないでしょう。

では、不動産の場合はどうでしょう。というか、不動産って、そもそもいくらの価値があるのでしょうか。

不動産を遺産分割するためには、不動産がいくらなのかをまず明確にしないと、遺産分割そのものが進みません。

例えば、不動産Xと預貯金4,000万円が相続財産で、長男と次男が相続人だとします。

不動産Xの価値が1億円だとすると、遺産総額は1億4,000万円となるため、長男と次男で7,000万円ずつ相続することになり、長男が不動産Xを単独で相続する場合、次男に対して3,000万円の代償金(遺産分割の帳尻合わせのお金のこと)を支払わなければなりません。

しかしながら、不動産Xの価値が6,000万円だとすると、遺産総額は1億円となり、長男が支払う代償金の額は1,000万円にまで減額できます。

このように、不動産の価値をいくらに決めるのかによって、遺産分割において支払う代償金の金額に大きな差が生じます。

不動産を相続する相続人は、価値を低く評価したいという気持ちが働き、その他の相続人は不動産を高く評価したいという気持ちが働くため、必然的にトラブルとなりやすいのです。

 

税理士の評価額で遺産分割して大トラブルに!

不動産相続では相続税が発生することが多いので、遺産分割から税理士にサポートしてもらう人も多いのですが、それが仇となって不動産相続がトラブルになることもあるんです。

相続財産に不動産が含まれている場合は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基準にして相続税評価額を算出し、その価額をもとに相続税が課税されます。

当該事例では、相続財産に含まれていた自宅の相続税評価額は3,000万円でした。

そこで、自宅を相続する長男は、もう1人の相続人である次男に対して「俺は長男だから3,000万円の自宅を相続する。お前には預貯金5,000万円をそのままあげるから、それで合意しよう」と告げました。

このように、長男は本当であれば1,000万円分預貯金からもらう権利はあるけれど、それはいらないから、といういわば大人の対応をしたのです。

ところが、これを聞いた次男が激怒!いったい、なぜでしょうか?

相続税評価額は時価よりも安い

確かに自宅の相続税評価額は3,000万円であり、税理士が計算しているため、間違いもありません。ところが、次男は近隣の不動産会社に聞いて回り、自宅を売った場合は6,000万円で売れると査定されていたのです。

となると、遺産総額は1億1,000万円となり、自宅を相続する長男は次男に対して500万円の代償金を支払う必要が出てきます。

長男からは「サービスするよ」という態度をとられたものの、実際の査定額で計算すると、「サービスどころか、こっちの方が損しているじゃないか!」という状況だったことが、次男を怒らせた原因だったようです。

このようなケースの場合、どちらの言い分が正しいのでしょうか。

 

遺産分割は「時価」で考えるのが基本

不動産に限らず、遺産分割をする際には、すべての財産について話し合い時点における「時価」をもとに話し合うのが基本です。

相続税評価額というのは、あくまで相続税を計算するために算出する評価額に過ぎないため、実際の不動産の時価よりも低くなります。

不動産の時価とは、その時の市場相場ということになりますが、相続税評価額とは違い、時価の計算式というものはないため、別の方法で時価を明確にしなければなりません。

複数の不動産会社に査定してもらう

時価の決め方に法的な取り決めはないため、基本的には相続人全員が納得すれば問題ありません。

私がおすすめするのは、不動産の所在地の相場に詳しい不動産会社にお願いして、数社に売却査定を出してもらうという方法です。

1社だけですと、査定を依頼した相続人と癒着していると勘ぐられる可能性もあるので、できれば、相続人それぞれが1社ずつ査定依頼をして、その結果を持ち寄って平均価格で折り合いをつけるのが、一番穏便に話し合いが進みます。

 

まとめ

今回の事例のように、税理士の算出した相続税評価額を基準にして遺産分割をしているケースは意外とよく見かけます。

相続税評価額はあくまで相続税の計算上のことなので、遺産分割についてはきちんと「時価」を査定して、その金額をもとに分割するよう注意しましょう。

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