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遺言の効力について

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法的効力を持つ遺言の作成条件

遺言は、どんなものでも効力が及ぶわけではありません。基本的な点として、次の2つのポイントがあります。

1.遺言能力を持つ遺言者が自分の意思で作成したものである

遺言者の条件として、民法では、15歳以上であることが法定されています。また、正常な判断能力を持った人であることも条件です。この条件を満たした人が、自分の意思で作成した遺言のみが有効とされます。脅迫などによって書かせた遺言に、法的な効力は生じません。

2.遺留分について

相続に関して民法では、法定相続人に最低限与えるべき財産を「遺留分」として保護しています。これを無視した内容の遺言は遺留分減殺請求権を行使されると、そちらが優先されます。

 

法的効力を持つ遺言の内容とは

遺言として法的な効力を持つ遺言事項は法定されており、法定遺言事項と呼ばれています。これ以外の遺言は、必ずしも法的な効力を持ちません。

では、法定遺言事項の3つの分野について説明します。

1.相続に関すること

「相続分の指定」

相続分は、遺言者や相続人の意思が特に示されない場合には、法定の相続分が配分されることとなります。法定相続分とは異なる相続分を与えたい場合は遺言であらかじめ指定しておくことで、その指定内容に法的な効力を持たせることができます。

「財産分割方法の指定」

現金・事業・不動産など、どの相続人にどの種類の遺産を相続させるかを指定する場合も、法的な効力を持たせることができます。

「財産分割の一定期間(5年間)の禁止」

遺言者の死後、相続人の間で財産の分割に関してトラブルが起こると考えられる場合には、最大で5年間の間、財産分割を禁止することも法的効力を持たせて指定できます。ある程度の時間を置くことで、相続人の感情を落ち着かせ冷静な財産分割が行われるようにするための取り決めです。

「相続人相互の担保責任の指定」

ある相続人が相続した財産に欠陥があった場合は、他の相続人が担保責任を負って補てんしなければなりません。遺言者はこの場合に他の相続人が負担する割合などを遺言で指定し、法的効力を持たせることができます。

「遺贈の遺留分減殺方法の指定」

一定範囲内の相続人には、遺言の効力によっても除外できない最低限の相続分である遺留分が定められています。遺留分の侵害が起きた場合に、遺留分を減殺請求される相続人や財産の順位を定める内容にも法的効力を持たせることができます。

「相続人の廃除とその取り消し」

遺言者に対する侮辱や虐待など、著しい非行を行った相続人の相続権を失わせることも遺言によって可能になります。生前に行った廃除に関して遺言で取り消しをした場合も、法的効力を持つ遺言となります。

「特別受益の持ち戻し」

生前贈与などの特別受益分は、特別受益の持ち戻しによって相続分から差し引かれます。しかし遺言でこれを免除させると記載しておけば、法的効力を持つ指示とすることができます。

2.財産の処分に関すること

「遺贈」

内縁の妻や夫、婿や嫁など、法定相続人ではないものの、財産を贈りたいと思う人を遺言で指定することで、法的効力を持たせて確実に遺贈することができます。

「寄付」

財産の一部または遺留分を除く財産を公益法人や公共法人へ寄付する意思も、遺言に記すことで法的効力を与えることができます。

3.身分に関すること、その他

「認知」

非嫡出子を、自分の子として認知することもできます。

「後見人、後見監督人の指定」

未成年者などの後見人と、それを監督する者を遺言に記載することで指定できます。

「遺言執行者の指定」

遺言書の効力を最大限発揮させるため、遺言内容を実現させる役割を担うのが遺言執行者です。相続人の誰かでも可能ですし、弁護士や税理士などの第三者に委託することもできます。

「祭祀継承者の指定」

お墓や仏壇などを管理継承する人を指定できます。

 

法的効力を持たない遺言とは

遺言には「付言事項」と呼ばれる、書いても構わないものの法的効力は持たない事項があります。

例えば、遺言を書くに至った経緯や相続人への感謝や謝罪、葬儀の方法についての指示などです。相続人は出来る限り付言事項に配慮するかもしれませんが、法的効力はないため実行されるかは不確実となります。

 

まとめ

せっかく遺言書を作成しても、法的に効力を持つ遺言でなければ無意味です。相続人の間で余計なトラブルを起こさないためにも、効力を持つ遺言の条件をよく確認して有効な遺言書を作成しましょう。