遺言 2017.11.01

遺言書を作成するなら遺留分に配慮が必要

遺言書を作成するときには、遺留分に気を付けておきましょう。ここでは、遺言書や遺留分について知っておきたい基礎知識をまとめています。

記事ライター:ゆらこ行政書士

遺言書の基礎知識

遺言書があれば法定相続よりも優先する

法定相続とは、民法に定められた法定相続人や法定相続分に従った相続のことです。被相続人が遺言書を残している場合には、法定相続に従う必要はなく、遺言書に従って相続が行われます。遺言書を活用すれば、自分の死後の財産の処分方法を自分の意思で決めることが可能になります。

遺言書の種類

遺言書は亡くなった後の財産の承継方法を定めるという重大な効果を持つものですから、方式についても民法で厳格に定められています。方式に則っていない遺言書は、たとえ作成しても無効となってしまいます。

民法では遺言についていくつかの方式を定めていますが、一般的に利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言になります。両者の違いは次のようになっています。

自筆証書遺言

遺言者が遺言の全文、日付、氏名をすべて自筆で記入して作成する遺言書です。相続開始後に、家庭裁判所で検認の手続きを受ける必要があります。

公正証書遺言

公証人に依頼して作成してもらう遺言書で、証人2人の立ち会いのもとに作成します。公正証書にすることで遺言が有効に行われたことが保証されるため、検認の手続きも不要です。

 

遺留分とは

遺言書も遺留分による制約を受ける

遺言書を活用すれば死後の財産の処分方法を自由に決めることができます。ただし、遺言書によっても「遺留分」を侵害することができないという制約があります。

遺留分とは、相続人のうち一部の人に認められた最低限の取り分で、残された家族が生活に支障をきたさないようにという趣旨で設けられているものです。相続人になるのは、被相続人の配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹になりますが、このうち遺留分を持っている人(遺留分権利者)は配偶者、子、直系尊属になります。兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分の割合

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合には被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合には被相続人の財産の2分の1とされています。遺留分権利者が複数いる場合には、この遺留分割合を法定相続分で分けることになります。

たとえば、相続人が被相続人の妻、長男、次男の3人の場合、この3人の遺留分として相続財産の2分の1が確保されることになります。各相続人の遺留分は、法定相続分に応じた割合になりますから、妻が4分の1、長男及び次男がそれぞれ8分の1ということになります。

遺留分を侵害した遺言書の例

たとえば、妻や子がいるにもかかわらず、愛人に全財産を遺贈する旨の遺言書を書けば、妻や子の遺留分を遺言書によって侵害していることは言うまでもありません。また、相続人のうち一部の人に全財産を相続させる旨の遺言書であっても、他に兄弟姉妹以外の相続人がいれば、その相続人の遺留分を遺言書によって侵害することになります。

遺留分は生前に放棄することもできる

遺留分権利者は、遺言者の生前に自ら家庭裁判所に申し立てることにより、遺留分の放棄をすることができます。たとえば、配偶者に全財産をどうしても相続させたい場合、子にあらかじめ遺留分の放棄をしてもらうという方法もあります。

なお、遺留分放棄が許可されるには、放棄が本人の自由意思によるものであること、放棄に合理的な理由と必要性があること、遺留分権利者が見返りを受けていることといった基準があります。上記の例で子に遺留分放棄してもらう場合には、生前贈与などの見返りを与えておく必要があるでしょう。

 

遺言書で遺留分を侵害されているときの対処法

遺留分を侵害する遺言書も有効

遺留分権利者がいるにもかかわらず、被相続人が遺留分を無視した遺言書を残している場合でも、その遺言書が直ちに無効になるわけではありません。遺言書では遺言者の意思をできるかぎり尊重しますから、遺留分を侵害する遺言書も、形式的要件をみたしていれば、基本的には有効となります。

遺留分権利者が遺言書により侵害されている自らの遺留分を取り戻すには、遺留分減殺請求をする必要があります。たとえ遺留分が侵害されていても、遺留分権利者が遺留分減殺請求をしなければ、遺言書どおりの相続が行われることになります。

遺留分減殺請求権の時効

遺言書で遺留分が侵害されているにもかかわらず、遺留分権利者が遺留分減殺請求をしなければ、遺言書に書かれた内容が確定せず、不安定な状態がいつまでも続くことになります。このようなことから、遺留分減殺請求権は、行使できる期間に制限が設けられています。

遺留分減殺請求は、「相続が開始し遺留分が侵害されていることを知った日から1年」または「相続開始から10年」のいずれか先に到来した時点までしかできないことになっています。

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