相続放棄 2017.10.03

遺産相続を放棄するとは何か?

社会には多くの権利があります。権利は、「○○することができる」といのうもので、いわばその人の認められている特権ですから、それをあえて行わないことも可能です。遺産相続も同じで、相続人は遺産相続をする権利があり、その権利を使わない、放棄する自由もあります。ここでは、そもそも遺産相続とは何か、それを使わない、放棄するとはどういうことか、説明します。

記事ライター:nexy編集部

遺産相続の意味は?

「遺産相続」という言葉を何気なく使っていますが、なぜ「遺産」を相続する必要があるのでしょうか?まず、この点から考えてみましょう。

日本の民法では、自分のものは自由に処分できるという「所有権絶対の原理」に基づいて、様々な条文が規定されています。ただ、この「所有権絶対の原則」は、公共の福祉に反する目的や権利の濫用を行わないという縛りがあります。それに反しない限り、自分が持っているものは、自由に使ったり処分したり、売買したりできるのです。

この「所有権絶対の原則」が守られるには、所有者が生きているということが前提です。所有者が亡くなれば、その所有物を所有したり管理したりする人がいなくなります。そうなると、例えばAさんがアパートを所有していて、Aさんが亡くなった後には、そのアパートに住んでいた人の権利を保護することができなくなります。

そのような事態を防ぐためには、人が亡くなった後に、誰かが亡くなった人の所有物を引き継ぐ必要があります。そこで、残された家族(遺族)が遺産を受け継ぐ、遺産相続するというルールができたのです。それでは、なぜ遺産相続する人は家族に限定されるのでしょうか?

それには3つの理由があります。一つは、相続財産の中には、家族(遺族)の協力があって形成されるものがあるからです。例えば、会社員の夫と専業主婦の妻の場合、確かに夫だけがお金を稼いでいるように見えますが、妻の「内助の功」がなければ、夫は働くことができないはずです。

二つ目は、遺族の生活補償です。残された遺族の生活が困窮しないように、亡くなった人の遺産で救済されるという意味があります。

そして三つ目は、社会が遺族に対して、財産が引き継がれることを予想、期待しているということです。財産、遺産には借金も含まれます。亡くなった人が借りていた金銭について、貸していた人は、遺族が引き継いでくれるものとの期待があるのです。

 

遺産相続の放棄とは?

人が亡くなった後、遺族に遺産相続されるものですが、それを「いらない、遺産相続を放棄する」というのは、どのような意味があるのでしょうか?

先程もご説明したように、人が亡くなってもその人の遺産は、誰かが引き継いでくれるものと、社会は期待しています。しかし、中には遺族が引き継ぎたくない遺産、遺産相続したくない遺産、あるいは初めから所有したいという気持ちが持てない遺産もあるはずです。

このような遺族の意思を無視して、「遺族なのだから必ず遺産相続してください」と第三者が強制することは、民法の原則に反します。民法では、ものの所有は公序良俗に反しない限り、その人の自由なのです。

つまり所有の自由が認められているということは、持たない自由も尊重されるということです。このことから、たとえ遺族であっても、亡くなった人の遺産を引き継ぐか引き継がないかは自由ということになります。これが「遺産相続の放棄」ができた経緯です。

 

遺産相続の放棄の方法

遺産相続を放棄したい場合は、相続人である以上、全く自分の意思、考えで決めて構いません。誰に強制されることもなく、非難されることもありません。多額の借金があり、とても払えないと思えば、堂々と「遺産相続の放棄」をして構いません。

お金を借りた人も「絶対遺産相続してください」と強制することはタブーです。きちんと法律で認められている権利だからです。

遺産相続の放棄をしたいと思う相続人は、亡くなった人が最後に住民登録していた市区町村を管轄している家庭裁判所に、必要書類を添えて「相続放棄申述書」を提出します。「許可」ではないので、遺産相続の放棄が却下されるとはありません。

ただ注意したいのは、期限があることです。自分が相続人になったことを知って3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。基本的には、人が亡くなって3ヶ月いないと考えて構いません。

この期限までに遺産相続の放棄の手続きをしておかないと、遺産相続を承認したとみなされます。借金があれば、当然支払う義務があります。ですから、亡くなってできるだけ早く遺産を把握し、遺産相続の放棄を行うのか、そのまま相続するのかを決めなければなりません。

なお、一度出した「遺産相続の放棄」は、取り消しができません。これは、3ヶ月以内でも同じです。

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