相続人・遺留分 2019.12.30

相続手続きをしたいのに相続人と連絡が取れない! どうやって対処すればいい?

遺産相続が発生したら相続人全員で遺産分割を行ったり、書類に署名捺印をしたりといった手続きが発生するため、まずは相続人全員と連絡をとる必要が出てきます。

ところが、相続人の中に不仲な人がいたり、もう何十年も連絡をとっていなかったりする人がいると、連絡先が分からない、拒否された、無視された、といった状況に陥ることも少なくありません。

そこで今回は、相続発生時に相続人との連絡が取れない場合の対処法について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

なぜ相続人と連絡をとる必要があるの?

相続が発生した場合、残された遺産については相続人全員で話し合う遺産分割協議を行って分割方法や割合を決めなければなりません。

実務的には、相続人全員が一か所に集まることは難しいケースが多いので、通常は手紙やメール、電話などのやり取りの中で決めることが多いです。

遺産分割協議がまとまったら、その内容について遺産分割協議書という書類にまとめて、相続人全員で署名捺印し印鑑証明書を添付します。

相続人を無視して遺産分割したらどうなる?

どうしても連絡が取れない相続人がいる場合、無視してそのまま手続きを進めてしまうケースがあるのですが、相続人のうち1人でも欠けているとたとえ形だけ遺産分割協議を成立させたとしても無効です。

遺産分割協議は法定相続分にかかわらず、必ず全員の合意によって成立していなければなりません。

なお、住所がわかってもどうしても連絡が取れず、行方不明と考えられる場合には、遺産分割協議の前に不在者財産管理人の選任申し立てや失踪宣告といった手続きが必要になります。

遺言書があれば連絡が取れない場合でも進められる

相続人と連絡が取れないと絶対に手続きが進められないわけではありません。

被相続人が生前に遺言書を残していた場合については、遺産分割協議よりも遺言書が優先されるため、遺言書の内容に従って遺産分割手続きを進めることが可能です。

相続登記に必要な添付書類についても、遺産分割協議書は不要で、検認済みの自筆証書遺言もしくは公正証書遺言があれば問題ありません。

ただし、遺言書の中で触れられていない遺産があった場合、その部分については連絡が取れない相続人も含め遺産分割協議をしなければ遺産分割することはできません。

このように連絡が取れない相続人がいる場合については、遺言書がある場合を除くと必ず連絡を取らなければならないのです。

 

 連絡をしても無視する相続人もいる

遺言書がない場合、相続人全員に連絡を取らないと、相続手続きが進まないことを説明しました。しかし、相続人に連絡を取っても、全員が快く協力してくれるとは限りません。連絡を無視したり、相続手続きへの協力を拒んだりされることもあり得ます。

無視・拒否される理由

連絡をしても相続人が無視や拒否をする理由としては、次のようなことが考えられます。

1. そもそも面識がない

相続人同士と言っても、お互いが会ったことがある人ばかりとは限りません。よくあるのが、親の相続で、亡くなった親が再婚しているケースです。親が再婚している場合、前婚の子も相続人になるため、前婚の子がいれば連絡をとらなければなりません。しかし、後婚の子と前婚の子はお互い会ったことがないケースも多いでしょう。

会ったことがない人から急に連絡があったとき、あまり連絡したくないと考える人は少なくありません。前婚の子にとっては、実の父親と言っても、もうかかわりたくないということも多いでしょう。面識がない相続人に連絡をとっても、結局無視されてしまい、相続手続きが進まなくなることがあります。

2. 全く付き合いがない

相続人同士面識はあっても、付き合いが全くないというケースもあるでしょう。たとえば、高齢で独身の人が亡くなった場合、子供も親もいないので、兄弟姉妹が相続人になることがあります。本来相続人になるはずの兄弟姉妹も高齢で既に亡くなっていれば、その子供である甥・姪が相続人になります。兄弟姉妹というのは大人になってからはあまり付き合いがないこともあります。その子供の甥・姪同士となると、全く付き合いがないこともあるでしょう。

親戚といっても、元々付き合いがない人から連絡が来た場合、放置する人は珍しくありません。特に、遺産相続はお金の話ですから、できればかかわりたくないと考える人も多いのです。

3.普段から不仲

よく知っているけれど、仲が悪い相続人もいます。たとえば、子どもがいない夫婦の夫が亡くなったケースでは、妻のほか、夫の親や夫の兄弟が相続人になることがあります。妻と夫の家族の間の折り合いが悪いことは珍しくありません。妻が元々不仲である夫の家族に協力を求めても、無視されたり嫌がらせされたりする可能性はあるでしょう。

無視・拒否された場合にできること

相続人に連絡をしたけれど無視されたり、協力を拒まれたりした場合には、どのようにすればよいのかと途方に暮れてしまうかもしれません。まずは、あきらめずに話をしてみることが大切です。

相続人全員の協力が得られなければ、家庭裁判所で遺産分割調停をするしかありません。遺産分割のために裁判所に出向かないといけないとなると、相続人全員にとって負担です。

たとえば、「このままでは裁判所で解決しなければならなくなり、面倒なことになりますよ」と穏便に話すことにより、協力してもらえる可能性もあります。無視や拒否は本人にとっても不利益になることを伝えましょう。

 

面識のない相続人と連絡を取る方法

連絡が取れないというよりも、そもそも面識のない相続人がいる場合については住所や連絡先すらわからないということもあります。

例えば、離婚し再婚した人の相続については離婚前の子と離婚後の子が両方相続人になるため、子供同士は全く面識がないというケースがあるのです。

では、相続人がどこに住んでいるのかわからず連絡が取れない場合、どのようにして調べればよいのでしょうか。

ステップ1:戸籍謄本を取得する

相続人と連絡が取れない場合は、まず戸籍謄本から相続人の所在をたどっていくことになります。まずは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、その中から連絡が取れない相続人の戸籍を追っていくのです。

他人の戸籍謄本については原則として取得できませんが、相続で連絡が取れないなどの事情があれば発行してもらうことができます。また、弁護士に依頼すれば職権で連絡が取れない相続人の戸籍謄本を取得してもらうことも可能です。

なお、連絡が取れない相続人が本人通知制度を利用している場合、他人が戸籍を取得するとその旨が本人に通知されます。

ステップ2:戸籍の附票からたどる

戸籍謄本で確認できるのはあくまで連絡が取れない相続人の本籍地です。

人によっては本籍地ではない場所に住んでいるケースもあるため、本籍地に通知を出しても届かないような場合は、本籍地の役所で「戸籍の附票」を取得します。

戸籍の附票を取得すると、連絡が取れない相続人のこれまでの住所変更履歴が記載されるので、今までどこに住んでいたか日付入りで確認することが可能です。

現在の住所がわかったら104の番号案内で電話番号を検索し、該当がなければ書留郵便などで書面を郵送して連絡を取ります。

ステップ3:弁護士に相談する

ここまでご自身で対応してそれでも連絡が取れない場合については、法的な手続きが必要になってきますので専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

なにより、連絡が取れない相続人がいるのを放置してそのまま手続きを進めないよう十分注意して下さい。

 

相続人から連絡拒否や無視された場合の対処法

相続人の中にはたとえ連絡が取れたとしても、何らかの事情で以降の連絡を拒否されたり、連絡しても無視されたりすることがあります。

このような非協力的な態度を取られた場合については、今後紛争に発展する可能性がありますので弁護士に相談することをおすすめします。

行政書士や司法書士ではだめなの?

相続に関して相談する先としては弁護士以外にも行政書士や司法書士などがありますが、紛争性のある事案については弁護士でなければ取り扱うことができません。

連絡拒否や無視をされている事案については、遺産分割調停や審判といった法的な紛争解決手続きが必要になる可能性があるので必ず弁護士に相談する必要があるのです。

 

まとめ

遺言書がない場合、相続手続きを行うためには相続人全員に連絡を取らなければなりません。連絡が取れない相続人がいると相続手続きがストップしてしまうため、できる限り早く所在を確認して連絡をつけることが大切です。

また、連絡先がわかっても、返事がなかったり、連絡を拒否したりする相続人がいることもあります。連絡拒否や無視といった意図的に連絡を拒んでいる相続人がいる場合については、法的手続きに従って手続きを進める必要性が出てきますので、できる限り早めに弁護士に相談しましょう。

遺言書が残されていれば、遺言書で指定された人だけで相続手続きを行うことができます。将来相続人になる人に音信不通の人がいる場合、相続人になる人同士が不仲な場合などには、トラブル予防のために遺言書を作成しておくのがおすすめです。相続発生後に困ってしまわないよう、相続人の側からも被相続人に遺言書を書くよう働きかけてみましょう。

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