相続税 2020.08.26

妻の相続税は優遇されるって本当?

相続税対策を検討中の方がまずしたほうがいいのが、相続税のシミュレーションです。
実は相続人の中には特例制度の適用によって、実質的にほとんど相続税がかからないというケースがあり、自身がそれに該当しているにもかかわらず無理に節税対策を行っているケースがあるからです。
そこで本記事では、相続税の課税関係において非常に有利となる妻の負担する相続税の配偶者控除について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

妻の相続税負担

人の平均寿命は男性よりも女性の方が長いので、必然的に妻が夫の相続人になるケースはよくあります。一般的な夫婦であれば、夫名義の家に妻も住んでいるケースが多いので、夫が死亡して子供がいなければ、家は妻が相続するのが自然です。

ただ、家を相続するとなると相続税評価額が高い都内だったりすると、それなりの相続税が課税されてしまうことがあります。

夫婦の協力あってこその財産

そもそも夫名義の遺産とはいえ、それらの遺産が形成できたことには妻の献身的な支えがあったからにほかなりません。もちろん逆の場合もしかりです。

夫婦というのは名義こそ分かれますが、形成してきた財産についてはお互いが協力しあったからこそのものなので、それを妻や夫が相続する時に相続税を課税するのはいかがなものか、という観点から配偶者が相続する遺産については、次のいずれか多い金額まで相続税が非課税となります。

・1億6,000万円
・法定相続分

具体的に計算式を示すほどではありませんが、例えば相続人が妻と子供の2名のケースで、遺産が4億円あったとした場合、妻の法定相続分である2億円までの金額については、相続税が課税されません。

これを一般的に配偶者控除といいます。

つまり、配偶者は自分の法定相続分までの相続財産については、相続税を納税する必要がないのです。

 

配偶者の税額軽減を使う方法

このように配偶者には非常に手厚い特例制度があるので、夫が妻の高額な遺産を相続する場合でも相続税はほとんどかからないのが実情です。

そうなると、相続税対策を考えている人からすると優先的に妻に遺産を相続させれば、相続税を節税できるのではないか、と思うのではないでしょうか。

例えば、妻と子供が相続人の場合で、遺産が2億円だとします。

このようなケースの場合、妻と子供半分ずつで遺産を分けるのではなく、ほとんどの遺産を妻に相続させれば課税される相続税は非常に少なくできるのです。

実際、配偶者控除を目当てにこのような遺産分割を計画する人がよくいるのですが、この考え方には実は危ない側面があります。

二次相続を忘れてはいけない

仮に多くの遺産を妻に相続させて相続税の発生を抑えることができたとしても、将来的には妻も死亡して相続が発生することになります。

これを二次相続といいます。

二次相続では妻から子供へ相続されることになり、この際には丸ごと相続税が課税されることになるのです。つまり、配偶者控除を優先的に使うということは、その分二次相続に相続税負担を先送りしていることになります。

よって、配偶者控除を使うことばかり考えていると、二次相続が発生した時に逃げ場がなくなって大変な思いをする可能性があるので、一次相続で遺産分割をする際には必ず二次相続まで踏まえて相続割合を決めることをおすすめします。

 

妻と内縁の妻は全然違う

今回は妻の相続税について解説しましたが、世の中には婚姻関係にない内縁の妻という方がおられると思います。内縁の妻は妻というものの、法的には配偶者には該当しないので、たとえ何年一緒に住んで生活をしていても、遺産は一切相続できません。

中には遺言書を書いて内縁の妻に遺産を遺贈しようとするケースもありますが、これだと相続税の面で非常に不利な取り扱いを受けることになります。

内縁の妻は相続税が高い

相続税は配偶者のように税額が軽減される人もいれば、反対に相続税が割高になる人もいます。

内縁の妻については、たとえ遺言書で遺産を受け取ることができたとしても、相続税は配偶者控除があるどころか、相続税の二割加算の対象になるので通常よりも20%割り増しされた相続税を負担しなければならないのです。

はっきりいってしまうと、相続の分野において内縁の妻はとにかく不利ですので、できる限り生前に婚姻しておくことを強くおすすめします。婚姻しないまま内縁の夫が死亡すると、妻が苦労する可能性があることを理解しましょう。

 

#まとめ

相続税の計算において妻や夫といった配偶者については、相続税負担が大幅に軽減されます。ただ、相続は一度きりではなく二次相続も視野に入れて考える必要があるので、一次相続の段階で二次相続まで見据えて遺産分割することをおすすめします。

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