相続税 2021.07.21

父の死後愛人の子が現れた!遺産相続はどうなる?

亡くなった親に隠し子がいたら、気持ちの上で受け入れられないだけでなく、遺産相続でもめてしまう可能性があります。
今回は、父の死後子供を連れて現れた愛人が遺産を要求した事例をご紹介します。隠し子がいる場合、相続の際どんなことが起こるのでしょうか?

記事ライター:ゆらこ行政書士

隠し子にも相続権はある?分かれ目は認知の有無

亡くなった人の隠し子の存在が、死亡後にわかることがあります。よくあるのが、相続手続きのために戸籍謄本を集めたときに、認知している子供がいたというケースです。

ちなみに、認知とは、父親と子供との間に法律上の親子関係を生じさせる手続きを言います。結婚していない男女の間に生まれた子は、生物学上は父親と親子であっても、認知しなければ法律上の親子にはなりません。

隠し子を認知すると、その旨は認知した男性の戸籍にも載ります。家族に内緒にしていても、死んだら必ず認知したことはわかるのです。そして、認知した隠し子と亡くなった人との間には法律上の親子関係が生じているため、その隠し子は相続権を持つことになります。

では、本人が認知していない隠し子がいる場合にはどうでしょうか?この場合には戸籍にも載っていません。認知していない隠し子は法律上の子ではないため、父親が亡くなっても相続権はないのです。

 

遺産分割協議が終わった後、父の愛人が子供を連れて登場!

独身のAさん(20代・女性)は、父、母と実家で3人暮らしでした。あるとき、父が他界。父は自宅や預貯金などの財産を残していますが、遺言書はありません。Aさんに兄弟姉妹はいないため、Aさんと母の2人で遺産を分けることにして遺産分割協議書を作りました。

不動産の名義変更や預貯金の解約の手続きを進めていた頃、Aさん宅を一人の女性が訪れました。女性は小学生くらいの子供を連れています。女性は父と長年懇意にしていたらしく、「亡くなったことを知人から聞いて訪れました」と言いました。

仏壇に手を合わせて拝んだ後、女性はAさんに衝撃の事実を告げました。自分は亡くなった父の愛人で、子供は故人の子供だと言うのです。そして、これまでも子供のために故人に援助してもらっていたので遺産も分けてほしい、きっと故人もそれを望んでいると頭を下げました。

 

本人が認知せず亡くなっても裁判で認知される

突然現れた愛人に、Aさんと母親がショックを受けたことは言うまでもありません。しかし、Aさんの父は子供を認知しておらず、それについては戸籍謄本で確認済です。となると子供に相続権は発生しませんから、遺産を渡す必要もないはずとAさんは思いました。

Aさんは念のため弁護士に相談したところ、父の死後3年以内なら、愛人女性は認知の訴えを起こせることを知りました。これは「死後認知」と呼ばれ、裁判で強制的に認知させる方法です。

認知の裁判では、認知する本人は既に死亡していますから、DNA鑑定により親子関係を確認します。これにより死後認知されれば、故人と子供の間に法律上の親子関係が生じ、隠し子は「非嫡出子」となります。

なお、「非嫡出子」とは法律用語で、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子、いわゆる婚外子のことです。これに対し、法律上の婚姻関係がある男女の間に生まれた子は「嫡出子」と呼ばれます。

 

非嫡出子と嫡出子の相続分は同じ

もし愛人の子が死後認知された場合、相続分はどうなるでしょうか?以前は嫡出子と非嫡出子の相続分には差があり、非嫡出子は嫡出子の半分しか相続分がありませんでした。

民法改正により、平成25年9月5日以降に開始した相続に関しては、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じです。この事例で隠し子が死後認知された場合、相続分はAさんの母が2分の1、Aさんと隠し子はそれぞれ4分の1ずつとなります。

 

認知後に遺産分割協議をやり直さないといけない?

AさんとAさんの母は、既に遺産分割協議を終えています。相続人として新たに隠し子が加われば、遺産分割協議をやり直さないといけないのでしょうか?

この点について、相続開始後認知によって相続人になった人に対しては、遺産分割終了後なら金銭で支払えばよい旨の規定が民法にあります。遺産分割協議をやり直す必要はありませんが、隠し子には遺産の4分の1に相当する金銭を渡さなければなりません。それについては仕方がないことと言えるでしょう。

 

隠し子がいる場合の相続対策

Aさんの事例のように遺言書もなく突然隠し子が現れた場合には、遺産を渡さざるを得なくなります。認知の有無にかかわらず、親に隠し子がいることがわかっている場合には、あらかじめ遺言書を書いてもらうのが有効です。

ただし、非嫡出子にも嫡出子と同じだけの遺留分がありますから、遺留分を請求される可能性はあります。また、そもそも親の方が隠し子にも相続させたいと考えていることもあります。悩ましいところですが、親の意に反して無理矢理遺言書を書かせるようなことはやめた方がよいでしょう。

 

まとめ

亡くなった親に認知されていない隠し子がいた場合でも、死後3年以内なら裁判で認知される可能性があります。もし隠し子が死後認知されたなら、財産を渡さなければならないことも知っておきましょう。隠し子がいて相続トラブルになりそうなケースでは、早めに弁護士に相談して対策を考えるのがおすすめです。

 

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