土地・不動産 2018.05.15

等価交換と不動産取得税について解説

売買や贈与によって不動産を取得した場合や、建物を新築または増築した場合には、都道府県から不動産取得税という税金が課されます。

等価交換においても例外ではありません。等価交換で不動産を取得すると、取得後半年から1年半くらいの間に納税通知書が届き、不動産取得税を納めなければなりません。

この記事では、等価交換で不動産を取得した場合の不動産取得税と、等価交換で不動産取得税が非課税になるケースについて解説します。

記事ライター:棚田行政書士

等価交換のメリット・デメリット

等価交換とは、土地の所有者がディベロッパーに土地を提供して建物(マンション、オフィスビル等)を建築してもらい、提供した土地の価格に相当する建物の区分所有権を得る方法です。手放す土地の権利と得られる建物の権利が同じ価格なので、等価交換と呼ばれます。

等価交換には、ディベロッパーに土地の全部を譲渡する「全部譲渡方式」と、土地の一部を譲渡する「部分譲渡方式」があります。全部譲渡方式では土地の全部がディベロッパー名義になりますが、部分譲渡方式では土地はオーナーとディベロッパーの共有名義になります。

等価交換は土地活用法の1つとして注目される方法です。まずは、等価交換にはどんなメリットがあるのか、デメリットとしてはどんなことがあるかを知っておきましょう。

メリット

・資金がなくても土地活用ができる

土地に自分でアパートやマンションを建てるとなると、建築資金が必要になります。手持ちがなければローンを組まなければならず、返済の負担が発生してしまいます。

等価交換なら建築資金はディベロッパーが出してくれますから、ローンの負担が発生するようなこともありません。リスクを抑えながら土地を有効活用できます。

・住まいを確保することも可能

等価交換によりマンションを建築する場合、手に入れたマンションの1室を自分の住まいとし、割り当てられた他の部屋を賃貸するといった利用も可能になります。住まいを確保しながら土地活用できる点もメリットになります。

・税制優遇が受けられる

古くから所有している土地を売却した場合、通常は譲渡所得税の課税対象になります。等価交換でも土地をディベロッパーに譲渡しますが、等価交換の場合には「立体買い換えの特例」により、譲渡所得税の課税を全額繰り延べることができます。

なお、繰り延べされても課税が消滅するわけではありません。将来買い換え資産を売却する際に、繰り延べた分の税金を払う必要があります。

デメリット

・土地を手放すことになる

等価交換では建物の区分所有権を得られますが、土地の所有権を失うことになります。先祖から受け継いだ土地である場合などは、本当に土地を手放してもよいか、よく考えてから決める必要があります。

・ディベロッパーの見きわめが難しい

等価交換ではディベロッパーと交渉して交換比率を決めることになります。ディベロッパー側の提案に納得がいかず、交渉が長引いてしまうこともあります。

等価交換における価格査定は複雑になります。信頼できるディベロッパーを選ばなければ、損してしまうこともあります。

・減価償却費が少なくなる

アパート・マンション経営をする場合、建物の取得価額は建築費となり、建築費の全額を減価償却費として経費計上できます。しかし、等価交換をした場合、建築費の全額を減価償却費にできません。

等価交換では、建物の取得価格は土地の取得価格を引き継ぎます。通常、土地の取得価格は建物の建築費よりも低いため、経費にできる部分が小さくなってしまいます。

 

等価交換における不動産取得税の計算方法と税率

不動産取得税は、売買・贈与・新築・増改築・等価交換などによって不動産を取得した場合に課税されるものです。

不動産取得税は、次の計算式で求めます。

土地・建物の税額 = 固定資産税評価額 × 4%(不動産取得税の標準税率)

平成30年3月31日までに取得した不動産の税率について、土地と住宅は3%に軽減されています。土地と住宅以外の不動産の場合は、標準税率です。

等価交換の際に不動産取得税の軽減特例を受ける場合は、「不動産取得税課税標準の特例適用申告書」の家屋用または土地用のいずれかを作成し、等価交換で不動産を取得した日から60日以内に都道府県税事務所に提出します。

場合によっては、等価交換した不動産登記の時点で都道府県税事務所が提出された書類をチェックし、軽減措置が受けられる場合には適用させてくれていることがあります。

軽減措置が適用になっているかどうかは、納税通知書を確認すれば分かります。軽減特例が受けられるはずなのに適用されていなければ、申告書を提出しましょう。

 

等価交換による借地権の取得。不動産取得税はどうなる?

不動産取得税はその名の通り、不動産の所有権を取得したことに対して課されるものです。では、等価交換で借地権を取得した場合はどうなるのでしょうか?

そもそも借地権とは?

借地権は、「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」を意味します。建物を建てるには土地が必要ですが、土地を所有するのではなく土地を借りて建物を建てる方法があります。借地権とは、他人の土地を借りて自己所有の建物を建てられる権利です。

土地と建物をセットで購入する場合、都心部などでは土地の価格が高く費用がかかってしまいます。借地権付き建物では地代は発生しますが、土地を購入する場合に比べて安く家を手に入れることができます。借地権付き建物には、固定資産税や都市計画税がかからないというメリットもあります。

借地権の取得は不動産取得税の課税対象外

不動産取得税は、不動産の所有権を取得したときに課税される税金です。借地権は不動産の所有権とは別物のため、不動産取得税は非課税です。

借地権付き建物を購入した場合には、建物についてのみ不動産取得税が課税され、土地については課税されません。

借地権を等価交換するケースではどうなる?

たとえば、Aが所有する土地の上にBが借地権の設定を受けて建物を建てているとします。このケースで、建物が建っていない部分のBの借地権と、建物が建っている部分のAの底地所有権を等価交換すれば、Bは底地に対する完全な所有権を手に入れることができます。

上述の例では、Bは等価交換により、借地していた土地の所有権を取得しています。この場合には、土地の所有権の取得となるため、不動産取得税の課税対象になります。

 

等価交換における不動産取得税の課税範囲はどこまで?

等価交換して取得した不動産が住宅やテナントの場合は、付帯設備があります。

等価交換での不動産取得税の計算は、取得した不動産の評価額に基づくものですが、付帯設備がある場合には、どのように評価額が計算されるのでしょうか?

家屋などの建築に付帯する電気・給排水・衛生・空調設備・エレベーター・エスカレーターなどの設備を家屋の所有者が自ら設置した場合には、設備を含めた価格が評価額となり、不動産取得税の課税対象となります。

つまり、等価交換で不動産を取得した人自身が付帯設備を取りつけた場合には、評価額が高くなってしまうことになります。

等価交換した不動産がオフィスビルや貸しビルなどの場合は、入居する会社やテナントが付帯設備を独自に取り付け、所有権を保留にしているケースもあります。

このような場合でも原則として、建物の所有者が付帯設備を含めて取得したものとみなし、評価額に含めて課税されることとなります。

ただし、納税通知書の交付を受けた日から30日以内に建物の所有者が申し出た場合には、付帯設備の部分については各入居者への課税とすることも可能です。

このような制度は、等価交換でビルを取得する場合、余計な不動産取得税を納めることにならないためにも、是非とも覚えておきましょう。

 

等価交換において、不動産取得税が非課税になるケース

等価交換における不動産取得税は、どんな場合にも無条件に課されるものではありません。非課税になるケースもあります。

ひとつには、等価交換した不動産が免税点以下である場合が挙げられます。免税点とは、課税標準となるべき価額が次の免税点未満の額であれば、不動産取得税を非課税とするという基準額です。

区分 免税点
土地の取得    100,000円未満
建物の取得 建築に係るもの(新築など) 1戸  230,000円未満
売買など建築以外の場合 1戸  120,000円未満

免税点未満であっても次の場合は、ひとつの取引の前後に起きた土地または家屋の取得が一連の不動産取得と判断されるので、非課税とならない可能性があります。

1. 土地を取得した者が、その土地を取得した日から1年以内にその土地に隣接する土地を取得した場合

2. 家屋を取得した者が、その家屋を取得した日から1年以内にその家屋と一構となるべき家屋を取得した場合

 

また、等価交換で取得した不動産を公共の道路として用いる場合や、学校法人が等価交換した不動産を教育に関連した用途で使用する場合などにも、不動産取得税は非課税になります。

 

まとめ

等価交換で不動産を取得すると、たいていの場合は不動産取得税が課されます。等価交換において、不動産取得税が非課税になるケースは限定されていますが、軽減制度は期間を定めた仕方で随時登場していますので、ぜひ確認するようにしましょう。

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