贈与・生前贈与 2017.11.21

教育資金の贈与に関する基礎知識

子供や孫に対する贈与については、一定の場合に非課税制度を利用することができます。例えば、教育資金の一括贈与がその代表例ですが、実は結婚や子育てのためにする贈与とは扱いが違うことをご存知でしょうか。

そこで今回は、教育資金の贈与に関する基礎知識について解説していきます。

記事ライター:棚田行政書士

教育資金の贈与に関する非課税制度

教育資金の贈与とは、父母または祖父母が30歳未満の子供や孫に対して教育資金を一括贈与する場合のことを意味しています。そして、贈与を受ける人(受贈者)一人あたり1,500万円までの贈与について非課税となります。(学校以外に支払える金額は500万円)

この制度のことを「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」といいます。

なお、この制度は平成31年3月31日までの措置となっています。
通常の贈与の場合、年間で110万円までが贈与税の基礎控除となっていますが、同制度を利用して教育資金を贈与することで、大幅に贈与税を節税することができます。

 

教育資金の贈与かどうかはどうやってチェックする?

では、贈与されたお金が教育資金かどうかはどうやってチェックするのでしょうか。

教育資金の一括贈与による非課税措置の制度を利用するためには、まず贈与された資金を銀行や信託銀行などの金融機関に預け入れます。そして、金融機関を通して非課税申告書を税務署に提出することで、この制度を利用できるようになります。

その後、教育資金を支出した際にその領収書を金融機関に提示し、教育資金と認められれば、贈与されたお金の中から精算を受けられるという仕組みです。

ですから、教育資金の贈与であるかどうかについては厳格に判断されるのです。

 

教育資金の贈与となる範囲について

教育資金として認められる贈与の範囲としては、学校に対して支払う教育費と、それ以外のところに対して支払う教育費の2種類に分けられます。

学校に対して支払う教育費
・入学金、入園料
・授業料
・保育料
・入学試験の費用
・学用品の購入費用
・学校給食費
・修学旅行費

それ以外に対して支払う教育費
・習い事(スイミングスクール、音楽教室、そろばん塾)
・学習塾
・通学に必要な交通費
・留学費用

これらの費用については、領収書を金融機関に提示することで、贈与されたお金の中から精算を受けることができます。

 

他の制度と教育資金の贈与との違いについて

父母や祖父母からの贈与というと、結婚、子育て資金の非課税制度がありますが、これと教育資金の贈与はどう違うのでしょうか。

まず贈与を受ける側の年齢ですが、教育資金の場合は30歳未満までで、結婚子育て資金の場合は20~50歳未満という違いがあります。また、結婚子育て資金の贈与は非課税枠が1,000万円までです。

ちなみに、結婚や子育てとしては、主に以下のような費用が認められます。

結婚に関する費用
・結婚式費用
・引越し費用

子育てに関する費用
・出産、産後ケア費用
・不妊治療
・妊婦検診
・子供の医療費

そして最大の違いは、贈与者が死亡した場合の措置です。結婚子育て資金の場合は、万が一贈与している人が死亡した場合、その時点で残額があればそれに対して相続や遺贈で取得したと判断されてしまい、相続税が課税されます。

これに対し、教育資金の場合は贈与者が死亡しても残額に対して相続税は課税されません。この点が最も大きな違いと言えます。

もともと結婚や子育て資金の非課税制度の利用が浸透しなかったのは、残高が残ったまま死亡するとそれに対して相続税が課税されてしまったからです。

制度を利用するために、領収書などの必要書類をその都度準備して提出しなければ精算できないほど手がかかるのに、使い切らなかった際に相続税がかかってしまうのであれば、あえて同制度を利用するメリットがなくなってしまいます。

贈与税の基礎控除である年間110万円の範囲内で贈与をしていく方が、手続き的にも簡単で負担も少ないでしょう。

 

教育資金の贈与をする前に考えるべきこと

子供の教育にはそれなりの費用がかかりますが、いつ、どの程度の出費が必要なのかについては、調べてみないとなかなかよくわからないでしょう。闇雲に贈与を受けるのではなく、子供の将来を考えて、いつどの程度の費用が必要なるのかについて、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

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