贈与・生前贈与 2017.12.31

生前贈与加算とは?

相続税対策として生前に贈与しておいた財産でも、ある一定の期間に贈与された分は相続発生時に相続財産と見なされ、相続税が加算されることになります。これが「生前贈与加算」です。

しかし生前贈与加算という制度では、生前贈与加算の対象となる人や対象とならない人、生前贈与加算の対象とならない贈与財産など、様々な規定が定められています。本記事ではこのような点について、生前贈与加算が導入された背景などと共に説明します。

記事ライター:棚田行政書士

生前贈与加算について

贈与者(財産をあげる人)の死亡後には、相続が開始することになります。そして、相続開始前の3年以内に贈与者が生前贈与した財産は、相続税のかかる相続財産であると見なされてしまいます。

この制度が、生前贈与加算です。

そのため、節税対策として効果的な贈与をしたい場合は、贈与者がまだ元気なうちから、できるだけ早く計画的に生前贈与することが必要となります。

 

なぜ生前贈与加算という制度があるのか

財産を生前に贈与しておくなら、相続税の節税ができます。しかし、病気や老齢などで死を意識するようになってから、相続税を課されたくないという理由で慌てて生前贈与されてしまっては、相続税という制度そのものの存在意義がなくなってしまいます。

そのような「相続税逃れ」を防ぎ、税収を確保するために設けられたのが生前贈与加算なのです。

 

生前贈与加算の対象となるのは誰か

子供や配偶者など、法定相続人である人への相続開始前3年以内の生前贈与は、生前贈与加算の対象です。ただし法定相続人への贈与でも、一部の特例や控除対象の贈与については、生前贈与加算の対象外とされています。この点については、後に取り上げます。

生前贈与加算の対象にならないのは誰か

本来、法定相続人として相続財産を受け継ぐ立場にいない人への生前贈与なら、生前贈与加算の対象外となります。

例えば、孫や兄弟姉妹などへの贈与です。

ただし、遺言などでこれら法定相続人でない人へ遺産を相続させる旨のことを表明している場合は、話は別です。場合によっては、生前贈与加算の対象者となってしまうことがありますので、節税を目的として生前贈与する場合は遺言にも注意しましょう。

 

生前贈与加算の対象となる贈与財産

贈与税の基礎控除として、受贈者1人あたり年間で110万円までの贈与は非課税とされています。しかし生前贈与加算では、この基礎控除を利用して行う贈与(暦年課税制度を利用した贈与)についても対象となっています。

さらに、親が好きなタイミングでまとまった財産を子供に贈与できる「相続時精算課税制度」を利用して贈与した財産についても、生前贈与加算の対象です。

もともと相続時精算課税制度では2,500万円までの贈与が非課税となりますが、相続が開始した後には贈与された当時の価格で相続財産に加算されることになります。

生前贈与加算の対象とならない贈与財産

では、生前贈与加算の対象とならない贈与財産には何が含まれるのでしょうか。

直系尊属からの贈与による、子供や孫の教育資金贈与は生前贈与加算の対象外とされています。受贈者である子供や孫が30歳になる前に贈与者が亡くなった場合でも、相続税は非課税です。

また、結婚・子育て資金のための贈与も基本的には生前贈与加算の対象外です。結婚・子育て資金の贈与は教育資金贈与と同じように、金融機関に専用の口座を設けて管理し、必要が生じる度に領収書などを提示して引き出す必要があります。

そのため、子供や孫が50歳になる前に贈与者が死亡してしまうと、死亡時にその口座に残っていた金額は相続または遺贈によって取得したことになってしまい、相続税が課税されてしまいます。

配偶者への自宅の贈与も、生前贈与加算の対象外となります。結婚20年以上の夫婦に限られてはいますが、年間の基礎控除と合わせて最高2,110万円の控除が可能になり、相続財産への加算もありません。

住宅取得資金の贈与も、生前贈与加算の対象外となります。父母や祖父母など直系尊属からの贈与に限りますが、国が指定する先進技術を備えた住宅の新築または改築の場合、受贈者1人あたり一定額までは非課税となります。

 

まとめ

生前贈与加算は、相続税を逃れようとする人を出さないために定められた制度です。人が亡くなるタイミングは事前に分かるものではありませんから、子供や孫が負担する相続税を軽減してあげるには、まだまだ元気なうちから計画的に贈与を行うことが大切です。

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