相続放棄 2018.01.03

相続放棄の期限はいつまで?

相続が発生したら、相続人は被相続人の財産状況を調べ、相続をするのか相続放棄するかを所定の期限までに選択します。マイナスの財産よりもプラスの財産が多いなら相続放棄されることはほとんどありませんが、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合は、状況によっては相続放棄を選択するでしょう。

相続が開始してから相続放棄を選択するまでの流れと、相続放棄の期限および期限の延長について解説します。

記事ライター:棚田行政書士

相続開始から相続放棄までの流れ

被相続人が亡くなると、その時点から相続が開始します。相続人は被相続人の財産を調査し、財産状況を把握するよう努めます。その後、相続するか、相続放棄するかを選択します。

相続の方法には、「単純承認」と「限定承認」の2種類があります。

被相続人のプラス・マイナス両方の財産をすべて無条件で受け継ぐことを「単純承認」と呼びます。プラスの財産の方がマイナスの財産より多い場合に選択されます。

相続で得られるプラスの財産でマイナスの財産を弁済し、あまりがある場合に相続する方法を「限定承認」と呼びます。限定承認は、相続人が複数いる場合は、相続人全員の合意が必要となります。

そして、被相続人の財産の実態を調べた結果、プラスの財産よりマイナスの財産が多いことが分かった場合は、一切の財産を放棄するという「相続放棄」を選択できます。単純承認・限定承認・相続放棄は、所定の期限日までに選択して届け出なければなりません。

 

相続放棄を選択する期限について

相続放棄を選択する期限は、「相続開始後3カ月以内」です。相続開始の起点は基本的には被相続人が亡くなった時であり、ここから3カ月が期限となる訳ですが、厳密には相続人となった人が「被相続人の死亡および自分が相続人であることを知った時」から3カ月が期限となります。

被相続人が亡くなったことを、時間をおいて知るケースもありますし、先順位の相続人が相続放棄したことによって自分が相続人となる場合、被相続人の死亡からはある程度時間が経過してしまっていることでしょう。このような場合、相続放棄の起算点は、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときとなります。

また過去の判例では、相続人が「相続財産は存在しない」と考えており、かつ相続財産の有無の調査が著しく困難となる事情がある場合には、その相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または普通なら認識できると思われる時から3カ月、という期限にするべきという例外的な判例もあります。

個々の相続人の事情によって、相続開始の起点の解釈は異なる場合があるということが分かります。

相続人となった人が相続放棄を選択する場合、相続の事実を知ってから3カ月の期限内に家庭裁判所へ相続放棄の申し立てを行います。

この3カ月という期限は、相続放棄の「熟慮期間」として設定された期限です。もしこの3カ月の期限内に被相続人の財産調査が完了しない場合は、3カ月の期限を超過する前に家庭裁判所へ「熟慮期間の伸長」を申し立てることで、期限をさらに延長してもらうことができます。

相続放棄の意思が固まったなら、期限内に早く申し立てをする必要があります。何の手続きもしないまま3カ月の期限を経過すると、自動的に単純承認と見なされてしまいます。マイナスの財産が多くありそうな場合は、この期限を意識して早めに財産調査を行いましょう。

 

期限内でも相続放棄が認められなくなってしまうケース

期限内に相続放棄の手続きをしたとしても、次のようなことがあると相続放棄は認められなくなってしまいますので、十分注意しましょう。

1.相続放棄手続き前に、財産を処分している場合

被相続人の財産を処分してしまうと、その後に相続放棄の手続きをしても認められない場合があります。ここで言う財産は、貴金属や不動産など明らかに価値の高いものだけではなく、被相続人の身の回り品や衣類なども含まれますので要注意です。

2.相続放棄の手続き後に、財産隠匿の事実が判明した場合

相続放棄の手続きを行っていながら被相続人の財産を消費したり、財産の存在を知っていながら隠匿していたりした事実が判明すると、相続放棄は認められず、単純承認とみなされます。

 

まとめ

相続放棄の期限は、被相続人の死後または相続の事実を知った時から3カ月以内です。この期限内で決定できない場合は、期間の伸長を申し立てることで、さらに期限延長が可能です。

被相続人の死後は遺族にとって忙しい時期となります。相続放棄の期限をうっかり超過してしまわないよう、3カ月という期限をよく意識しておきましょう。

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