相続放棄 2018.03.21

相続放棄を自分でするための手順を解説

被相続人の遺産を相続するということは、本来は喜ばしいことであり、自分にとってプラスになることでもあります。しかし、様々な理由で、相続する権利を放棄する選択である「相続放棄」をするケースも考えられます。

相続放棄は非常に重大な決定なので、自分でよく考えて、自分で準備をしてから行う必要があります。この記事では、自分で相続放棄をする時の注意点や、相続放棄以外に選択できる方法、自分で相続放棄をする時の手順について解説します。

記事ライター:棚田行政書士

相続放棄とは

相続は、被相続人の財産も権利も債務も、すべてを受け継ぐことになります。債務は相続したくないが財産は相続したいというわけにはいかないのが相続です。相続では、被相続人が多額の債務を残して亡くなってしまうこともあります。

そんな場合に、相続人が無条件ですべての債務を肩代わりしなければならないとしたら、非常に理不尽なことと言えるでしょう。相続放棄は、そのようなケースにおいて自分で自分を守る役割を果たします。

自分で相続放棄をすれば、自分ははじめから相続人ではなかったことになります。つまり、被相続人の遺産も債務も自分で一切受け継ぐことがないという立場になります。

相続放棄に関する誤解で、遺産分割協議の時に「相続しない」という意思表示をすれば相続放棄になる、というものがあります。

しかし、相続放棄とは、裁判所に受理されることで初めて法的な効力を持つものです。正式な相続放棄をするためには、自分で法的な手続きを踏まなければなりません。

 

自分で相続放棄する場合の準備

まずは、本当に相続放棄が妥当か?ということを自分で考える必要があります。そのために必要なのは、相続財産の財産目録です。

繰り返しになりますが、相続放棄とは、被相続人の持つ価値ある遺産も一切受け継げなくなることを意味しています。相続放棄は原則として取り消すことはできないため、相続放棄した後で莫大な遺産が見つかったとしても、一切相続できなくなってしまいます。

もし、調査結果に疑問があり、自分でさらなる調査をした方が良さそうな場合には、相続放棄の前に相続財産の徹底的な調査を自分で行いましょう。

 

相続放棄以外の選択肢がある

被相続人の債務などが理由ではなく「他の相続人へ多くの遺産が残るようにしたい」という理由で相続放棄を考えているなら、それは遺産分割協議での意思表示で十分行えます。自分で相続放棄をするほどの事態ではないかもしれません。

また、被相続人のプラスの財産もある程度はあるがマイナスの財産の総額が分からない場合には、プラスの財産の範囲内に限定してマイナスの財産を弁済する「限定承認」という方法も選択できます。

限定承認では弁済する債務の範囲が限定されているため、自分で自腹を切ってまで被相続人の債務を弁済する必要はありません。限定承認であれば、相続人でなくなることはないため、限定承認後に遺産が見つかっても、相続人として相続できます。

 

自分で相続放棄する場合の手順

では、自分で相続放棄を行う場合の具体的な手順をご紹介しましょう。

まずは、相続放棄を希望する人が自分で、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ「相続放棄申述書」や、その他の必要書類を提出します。

自分で相続放棄する際に基本的に必要になる書類や費用は、次の通りです。

・相続放棄の申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・800円分の収入印紙
・予納切手(受理証明書などの返送時などに使う切手)
・申述人(放棄する人)の戸籍謄本

場合によって、この他にも必要書類が出てくる可能性があります。

相続放棄に必要な書類を提出すると、家庭裁判所が審理に入ります。数週間後には、本当に自分で決めたことかどうかを確認し、裁判所が申述人の事情を知るために、相続放棄に関する回答書を送付してきます。

回答を自分で記入したら署名押印して返送し、相続放棄申述受理通知書が届くのを待ちます。相続放棄申述受理通知書が届いたら、相続放棄の手続きは完了です。

相続放棄申述受理通知書は、被相続人の債権者に取り立てされた時などに相続放棄したことの証明として必要になります。自分で大切に保管しましょう。

 

まとめ

相続放棄は自分で自分の身を守る手段にもなりますが、安易に行うと自分の首を絞める結果にもなりかねません。

自分で相続放棄をしようと思う場合は、本当にそうするべきかどうかを自分でよく考えて、他人任せにせず、自ら決定を下しましょう。

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