相続放棄 2017.10.04

相続放棄の手続きはいつまで有効?申請期間のリミットに要注意

人の死は受け入れがたいものです。死を悼むことに時を惜しんではなりません。
しかし、身近な人の死と同時に、タイムリミットが迫っているものがあります。「相続放棄」です。
「相続」と聞くと、家・土地・宝石類など被相続人が持っていたものを「もらう」イメージが強いと思います。
しかし、これはあくまで相続の一面に過ぎません。被相続人が借金を抱えていた場合、その借金はどこへいくのかを想像してみて下さい……。実はその借金も、相続人であるあなたに承継されるのです。
このように、「相続」は被相続人の財産を「もらう」という正の側面だけではなく、被相続人の負債を「負う」という負の側面も持ち合わせています。そのため、相続の効果は「包括承継」と説明されます。正(プラス)の遺産も負(マイナス)の遺産も「包括」的に相続人に承継されるという意味です。
この記事では、相続により相続人が被相続人の負債を負わなければならなくなったときに用意されている「相続放棄」という制度について、「期間」に焦点を当てて説明していきます。

記事ライター:今井弁護士事務所

■ 相続放棄とは

まず、相続放棄について軽く説明します。

ある日突然、消費者金融から「亡くなったあなたのお父様に1000万の借金があったので、相続人であるあなたが代わりに1000万円を支払ってください」という内容の督促状がきたとします。上で述べた通り、「相続」はマイナスの財産をも承継させてしまうので、この消費者金融の主張はウソではありません。

では、お父様のプラスの財産が100万円しかなかったとしても、1000万円もの大金を消費者金融に支払わならければならないのでしょうか。

ここで登場するのが「相続放棄」です。 そもそも、相続人は相続財産を承継するか放棄するかを自由に決定することができます。そして、相続放棄とは、文字通り、相続人が被相続人からの相続財産を放棄することを意味します。ここで注意が必要なのは、民法上マイナスの遺産のみを放棄することは許されていない、ということです。相続放棄をすることは、プラスの遺産・マイナスの遺産両方の相続財産を手に入れる機会を捨てることを意味します。「父親の土地は相続するが、借金1000万は相続しない」といった身勝手な一部相続放棄はできないのです。

とはいえ、上記の消費者金融の例のように、マイナスの遺産(1000万)がプラスの遺産(100万円)を上回ってしまっていて、相続をしても900万円損をしてしまうような場合には「相続放棄」をしてしまうべきでしょう。被相続人の息子・配偶者・兄弟姉妹であるというだけの理由で、被相続人の借金を常に負わされるのはかわいそう、という理由からこのような「相続放棄」の制度が用意されているのです。

 

■ 相続放棄には3か月の「期間」がある

しかし、この「相続放棄」はいつでもできるわけではありません。民法915条は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について……放棄をしなければならない。」と規定しています。相続は被相続人の死と同時に開始します。そのため、相続放棄は被相続人の死を知ってから3箇月以内に行わなければならないのです。

被相続人の負債が多く、自分が相続によって損をすると分かって3箇月間も放置していた怠け者の相続人には、「相続放棄」の制度は使わせないということです。 もっとも、この3箇月の「期間」は絶対ではありません。

まず、相続人は家庭裁判所にお願いして3箇月の「期間」を延長してもらうことができます。相続人は信用情報機関等を通して被相続人にいくら財産があり、いくら借金があるのかの調査をすることができます。この調査に時間がかかりそうな場合などは、あらかじめ裁判所にお願いすることで、3箇月の「期間」を延ばしてもらうことができるのです。

さらに、3箇月の「期間」が経過したあとであっても、相当な理由があれば例外的に相続放棄が許されるとされています。その例として、被相続人と疎遠であった場合や、負の遺産が保障肢無であった場合が挙げられます。疎遠の被相続人がこっそりと借金をしていた場合等は、相続人が借金の存在を発見するのに3箇月以上かかってしまっても仕方がありません。また、保証債務は必ずしも支払いをする必要があるとはいえず、見つけるのに時間がかかってしまうので、3箇月を過ぎてしまってもやむを得ない(場合がある)ということです。

 

■ おわりに

以上長々と説明してきましたが、被相続人に多額の借金があった場合には、創造人は3箇月という「期間」内に「相続放棄」をすることができる、ということを心に留めておいて頂ければと思います。

相続放棄に「期間」がある以上、いざというときに速やかに「相続放棄」をするか否かの判断ができる必要があります。そのためには、日頃から家族間で遺産等の情報をしっかりと共有しておくことが大切であるといえるでしょう。

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