相続税 2020.02.19

相続税を回避するために、生前贈与契約書が必要なわけとは?

相続税の節税対策で生前贈与を活用する人がたくさんいますが、中には法的に贈与が成立していない生前贈与を気が付かないまま続けているケースがあるため注意が必要です。

中でも生前贈与契約書を作成しないまま贈与をしていると、相続発生時に相続税がしっかり課税されてしまうこともあります。

そこで本記事では、生前贈与で相続税の節税対策をする場合に生前贈与契約書が必要なわけについて解説します。

記事ライター:棚田行政書士

生前贈与が相続税の節税になる理由

そもそも生前贈与がなぜ節税になるのかご存じでしょうか?

贈与というと税率が高いというイメージがあるせいか、生前贈与をすると余分に税金を取られるのでは、と質問されることが多いのですが、実は贈与税と相続税は税率を単純に比較してはいけません。

というのも、贈与というのは自分の任意の時期に何回でも行うことができます。

例えば、毎年100万円ずつ10年間にわたって生前贈与をすることで、年間110万円の非課税枠をフル活用して1,000万円を税負担なしで贈与することも可能なのです。

一方で相続は生前贈与とは違い、自分でタイミングを選べないだけでなく、一度にすべての財産に対して課税されるため税金の重みが違います。

そのため、計画的に生前贈与契約書を作って贈与をしていくことで相続財産を減らすことが相続税の節税につながるのです。

生前贈与する財産

生前贈与契約書を作成して贈与する財産は、預貯金だけではなく不動産や株式などあらゆる財産が対象となります。

ただ、実際の節税効果を考えると基本的に預貯金を優先して生前贈与することがおすすめです。

預貯金の生前贈与がおすすめのわけ

預貯金に相続税が課税される際の課税評価額は金額そのもののため、1億円を相続すれば評価額も1億円となります。

一方で不動産については売却した場合の時価よりも評価額の方が低いことと、小規模宅地等の特例など評価額を引き下げる特例を使うこともできるため、基本的には預貯金から優先して生前贈与したほうがよいのです。

ただし、株式については評価方法が上場株式と非上場株式とで違いがあり贈与するタイミングによっては贈与税が高額になることもあるため、生前贈与を検討している場合は必ず税理士に相談することをおすすめします。

 

生前贈与契約書が必要になるわけ

生前贈与をしている方の相続税申告を見ていると、ほとんどのケースで生前贈与契約書が作成されていません。

「なにも生前贈与契約書まで作成しなくても大丈夫なのでは?」

と思う人もいるかと思いますが、実は生前贈与契約書がないと贈与が認められない可能性があるのです。

生前贈与の成立要件

生前贈与は財産をあげる側があげると伝えて、もらう側がもらうと返答すれば成立します。

また、生前贈与は生前贈与契約書を作成せず口頭だけで行ったとしても有効です。

だったらわざわざ生前贈与契約書なんていらないのでは、と思った方、もしも税務署から生前贈与の実態を疑われた場合、証明できる証拠はありますか?

確かに生前贈与契約書がなくても法的には贈与が成立しますが、客観的に証明するとなるとやはり生前贈与契約書が必要なのです。

生前贈与契約書の有無による違い

生前贈与契約書がない贈与については、実際に贈与した財産を相手が受け取った段階で成立するのに対し、生前贈与契約書がある贈与については生前贈与契約書を締結した日に贈与が成立したと考えます。

例えば、2019年12月30日の銀行最終営業日に年110万円の非課税枠を使おうと駆け込みで贈与をする人がたくさんいますが、振り込んだお金が2020年1月6日に相手に着金したら2020年の贈与扱いになってしまうのです。

2019年の贈与扱いにしたいのであれば、生前贈与契約書を2019年12月30日で締結して保管しておく必要があります。

 

生前贈与契約書がないと税務調査でどうなる?

生前贈与契約書や贈与証書などの書面が残っていない場合、相続税の税務調査において贈与がなかったのでは、という指摘を受ける可能性が高くなります。

例えば、祖父から孫に生前贈与で孫の口座にお金を振り込んでいる場合でも、税務署から名義預金ではないかとの疑いをかけられ贈与が成立していないと指摘されることがよくあるのです。

このような場合に生前贈与契約書があれば、贈与が成立していることの1つの証拠として有効となります。

 

まとめ

生前贈与契約書があれば絶対に大丈夫ということではありませんが、少なくとも贈与の証拠としては非常に有効なのでこれから生前贈与を検討しているのであればぜひ生前贈与契約書を作成することをおすすめします。

ただし、生前贈与契約書を作成する際には必ず両者の直筆で署名捺印することを徹底してください。税務署は生前贈与契約書の筆跡についても細かくチェックしますので、万が一同じ筆跡だとそれこそ生前贈与を否定されてしまいます。

口頭だけの贈与ですと、税務調査の際に厳しく追及されてしまう可能性がありますので十分注意しましょう。

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