相続税 2020.10.14

相続税は遺産が3000万円以下ならかからないわけとは

相続が発生すると、自分に相続税が課税されるのか心配になることと思います。
相続税はすべての人に課税される税金ではありませんが、人によっては3000万円以下ならかからないという人もいたりして、混乱してしまう人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、相続税は遺産いくらまで無税なのかについて簡単にシミュレーションしながら解説したいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

相続税はいくらまで無税?

相続税は基本的にすべての人が対象ですが、相続する財産が相続税の基礎控除額以下であれば課税対象財産がゼロになるので、事実上無税になります。

ポイントなのは、相続税の基礎控除額は人によって違うということです。これが一律同額であればいくらまで無税かは一言で回答できるのですが、次の計算方法によって算出するため、相続のケースによって金額が変わります。

相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

このように法定相続人が1名増えるごとに600万円が上乗せされて増えていきます。最低でも遺産が3000万円以下なら相続税がかからないという人がいるのは、仮に相続人が全員死亡していて遺言書による遺贈のみである場合でも、最低3000万円は控除されるのでそのように表現する人がいるのです。

例えば、相続人が子1名で相続財産が預金1億円の場合、課税遺産総額は次のようになります。

3000万円+600万円×1名=3,600万円

1億円-3,600万円=6,400万円

6,400万円×30%-700万円=1,220万円

これが1人で1億円相続した場合の相続税の金額です。

法定相続人の人数に注意

相続税の基礎控除を計算する際の法定相続人の人数は、勘違いをする人がいる部分なので注意が必要です。

例えば、相続人の中に相続放棄をする人が出てきた場合、民法的には相続放棄をすることで当初から相続人ではなかったことになりますが、相続税の基礎控除額の計算上は法定相続人の人数に含めて計算することができます。

また、相続税を節税するために養子縁組をして法定相続人を増やそうとする人が時々いますが、この場合も次のような制限がかかりますので注意が必要です。

・被相続人に実の子供がいる場合1人まで
・被相続人に実の子供がいない場合2人まで

このように、養子縁組で基礎控除額の計算に加算できる人数には制限がかけられています。また、明らかに節税目的の養子縁組である場合など、不当と認められる場合は計算から除外させられるケースもあるようです。

相続税申告は必要?

相続する財産が基礎控除額以下であれば、相続税申告の必要はありません。

但し、これには誤解している人が多いので注意が必要です。というのも、相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額以外にも相続税を節税できる特例制度があるからです。

中でも多くの方が適用するのが、配偶者特別控除(配偶者の税額軽減)制度です。

配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続する財産については、次のいずれか高い金額まで相続財産から控除できるという制度です。

・1億6,000万円
・法定相続分

よって、最低でも1億6,000万円までは財産を相続しても相続税が発生しないので、中には「配偶者には3000万円超えても相続税がかからない」と誤解して認識している人もいます。

配偶者は相続税がかからないのではなく、特例制度によって控除される金額が非常に大きいので、よほど多くの財産を相続しない限りは相続税が課税されないということなのです。

非常にありがたい制度なのですが、当該制度は相続税の最低3000万円控除できる基礎控除額とは違い、適用した結果たとえ相続税が課税されなかったとしても、必ず相続税申告が必要になります。

なぜなら、配偶者の税額軽減を適用するために相続税申告が必要だからです。

このことを知らずに、自分は配偶者だからといって相続税申告を放置していると、税務署からお尋ねが届くことになりますので十分注意しましょう。

相続税対策のポイント

相続税の基礎控除額は相続税対策を考えるうえで重要なポイントになります。相続財産が基礎控除以下になるかどうかで、将来相続人にかかる負担が大きく変わってくるので、保有資産が基礎控除額よりも多い方については、生前贈与をしたり不動産を購入するなどしたりして、適切な相続税対策を講じたりすることが大切です。

 

まとめ

相続税は「3000万円+600万円×法定相続人の人数」が基礎控除額なので、この金額以下であれば相続税は無税となります。ただ、法定相続人の人数は相続によって変化しますし、養子の扱いについても注意が必要です。

また、本人の死後は認知した子供など思わぬ法定相続人が発覚することもありますので、必ず戸籍謄本、除籍謄本などで正確な法定相続人を確認してから計算しましょう。

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